こんにちは!
電車ってなんで感電しないの?
なんてことを考えたことはありませんか?電車に流れる電気は、架線からもらう
- 直流の1500V
- 交流の25000V
などの高圧の電気が流れていることは別の記事でお話しました。
ではこんなに高圧の電気を使っているのに本当に感電しないのでしょうか?
結論!感電しません!!その理由は
アースが取られているし、絶縁測定が正しく行われているから!
アース?絶縁測定??
意味わからんっ!
ってなると思いますので、それらについて解説していきます!
最後まで読んでいただければ感電しない理由が分かると思うので、ぜひお付き合いください!
- 人体は状況によって電気の流れやすさが変わる!
- アースとは、地球に接続することで人体に流れる電気を微小にすること
- 絶縁測定とは、電気がほとんど流れていない(絶縁されている)ことを確認する試験のこと
家庭でも感電のリスクはあるので、合わせて理解しておきましょう!
それでは、よろしくお願いします!
人体が感電する理由と仕組み
電車の危険の一つに「感電」があります。これは鉄道の三大労災の一つとして数えられることがあります
まずはこの感電の仕組みについて知っておきましょう!
オームの法則で電気の流れる量が分かる!
電気が流れる量というのは、オームの法則を用いることで計算できます
電気が流れる量(A) = 電圧(V) ÷ 抵抗値(Ω)
で計算できます。この3つの関係をオームの法則と言います。詳しくはこちらの記事で解説しております
ここで人間の抵抗値は約4000Ωなんて言われたりします(※諸説あります)
しかしこれは条件によってかなり変化し、汗をかいたり雨で濡れていたりするともっと低くなります。また来ている服装などによっても変化するので実際には500~10000Ωと言われたりもします。
仮に1番電気が流れやすい状態の時を500Ωとして、家庭用のコンセントの電圧は100Vが流れています。これを計算してみると
100V ÷ 500Ω = 0.2A
となります。でもこれがどれくらいの量なのかよく分からないですよね?
人体が感電した時の電気の量と症状については以下のようになるとされています
電流[A] | 症状 | 備考 |
0.001 | ピリッと感じる | 最小感知電流と呼ばれる。 |
0.005 | めっちゃ痛い | 我慢できないくらい痛い。 |
0.010 | ギリギリ動ける | 可随(かずい)電流と呼ばれる。 |
0.020 | 筋肉が収縮し、自分では動けない | 不随(ふずい)電流と呼ばれる。 |
0.050 | 0.1秒以上流れると呼吸困難や一時的な心肺停止を引き起こす。 3秒以上で心室細動の可能性が出てくる。 | 心室細動電流と呼ばれる。心室が痙攣をおこし、血液循環ができなくなる。 死に至る可能性がある。 |
0.100 | 0.5秒以上で心室細動の可能性が出てくる。 | 心拍停止・呼吸停止・火傷なども引き起り、死に至る可能性が高くなる。 |
先ほどの計算例では0.2Aの電気が流れていたので、非常に危険であると言えます。実際には電車の作業では屋根上などの高所での作業もあるため、0.02A以上の痙攣(けいれん)などが起こると落下の危険も同時に出て来るので非常に危険です。
ここの例では0.05Aを危険な電流値とすると危険な電圧は
0.05A × 500Ω = 25V
となります。電気工事の世界では危険な電圧を42(しに)ボルトと言ったりするそうですが、家庭用の100Vでも十分に危険であることがわかります
なのでお風呂上がりの濡れた状態では電気を通しやすくなっている(抵抗値が低い)のでコンセントや電化製品には触れないように気を付けましょう!
電車の電圧はもっと高いなら、もっと危険なんじゃ!?
って思われるんじゃないかと思いますが、そこで感電しないようにする「アース」が登場します!
感電しない理由!人体を守るアースとは
アースと聞くと
- 洗濯機
- トイレ
- 冷蔵庫
- エアコン
- 電子レンジ
などに接続したことがある方もいらっしゃるかもしれません。コンセントの下についているあれですね!
でもあのアース、なぜ線を取り付けると感電防止になるのでしょうか?
実際に感電するまでの流れを家庭バージョンで見てみましょう!
感電する仕組み!感電までの流れ
家庭用の電気は電柱から引き込まれ、コンセントにつなぐことで電化製品は動作します。
洗濯機を例にするとこんな感じになります。
ここでもう少しイメージを変えていくと、コンセントからの電気は洗濯機のモーターを回すためにつかっています。
この時になんらかの理由で洗濯機が故障して電気が漏れてしまった場合、洗濯機のケース部分に電気が流れて人が感電してしまいます(人に電気が流れる回路になってしまう)
以上が感電する時の流れになります。これを防ぐために「アース」の登場です!
感電しない!?アースの本当の役割
アースとは地球(earth)を意味する言葉になります
電気は流れやすい方に流れるという性質があります。アース線が地面に繋がっていることで、人体よりも流れやすいアースに電気が流れ、感電を防ぐことが出来ます
え?地面って電気流れやすいの?
ポケモンでも効果ないはずだけど??
という疑問があると思います。たしかに金属などに比べると土や石は電気が流れやすくはありません。
しかし別の記事で解説しましたが、抵抗は電気が流れる導体の太さに反比例する(太いほど流れやすい)という説明をしました。
地球を一つの導体と考えると、地球の太さは半端ないです。なので結果として地球は電気を通しやすい状態となります(実質0Ω)
これを見つけた人すごすぎ!!
なので漏れてしまった電気は地面を通り、電柱に帰っていきます
そういった理由から、洗濯機のケースに流れた電気はアースに繋がっていることで感電を防止できるんですね!
ただし、微量ではありますが人体にも電気は流れます。アースの方が流れやすいのでたくさんの電気を流してくれるだけで、人体に全く流れないわけではありません。
同じ理由でレールもアースに繋がっているため、踏切のレールに触っても感電することがありません。
感電させない!絶縁測定とは
電車では定期的に絶縁測定をすることが義務付けられています
では絶縁とは何か?
つまり絶縁とは電気をほとんど通さない状態のことを言います
例えばゴムは電気を通さない物質だというのはなんとなくご存じではないでしょうか?
神エネルもびっくりしてましたよね!(ワンピースより)
なのでゴムは絶縁体ということになります。しかしここで問題なのは電気を完全に遮断するものではないということです。
絶縁体は電気を通さないわけじゃない?
絶縁体とは電気をほとんど流さない物質という説明をしました。これは電気を完全に遮断するわけではないということです。
どういうことかというと実際には抵抗値がとても高いので、ほとんど電気が流れないというのが正解です
先ほどのゴムの抵抗値は約1.0[MΩ](Wikipediaより)。Mはメガで10を13回掛けた値です。家庭用の100Vで計算すると
100V ÷ 1.0MΩ = 0.00000000001A
となり非常に少ない電気しか流れないことになるため、ゴム手袋などをすることで感電防止をすることができます(もっと高圧を扱う場合は絶縁手袋が必要)
感電させない検査!絶縁測定とは?
では本題の絶縁測定とは、何か?答えは
となります。実際に電気を流して、規定値以上の絶縁抵抗が測定できれば、電気は漏れていないということが分かります
反対に絶縁抵抗が規定値を満たない場合は、電気が絶縁されていない、つまりどこかで漏れてしまっていることとなります
この絶縁測定をすることで、電車の中の電気回路が正常で漏れていないかを定期的に確認し、
- お客さまが感電しないこと(車体に電気が流れていないこと)
- 機器の回路が保護されていること(ほかの機器回路と混触していないこと)
を確認しています。
ちなみに:絶縁測定のやり方
絶縁測定はメガーと呼ばれる測定器を使って行います。
メガーにはバッテリーが入っていて、メガーが電源となって回路に電気を流します。
そのため測定する電気回路には電気が流れていない状態で行います。
電気回路に使用する電圧によってメガーの電圧を調整しますが、電圧を流して流れる電気の量が分かれば抵抗値がオームの法則で分かるという測定機器になります。
また感電の際の説明と同様に濡れた状態では電気が通りやすくなるため、電車の絶縁測定においても雨の日などは絶縁測定が上手く取れないことがあります。そのときはなるべく乾燥させるようにして規定値以上が取れるまで行います。
まとめ:アースが取られていて絶縁測定が正しく行われていることが、電車に乗っても感電しない理由!
今回は「アース」と「絶縁測定」についてお話しました。
アースと絶縁測定、どちらにおいても重要なのが全く電気が流れていないわけではないということです!
家庭の電気回路でも実は私たちが感電しないようにこれらがきちんと工事されているんですね!
また感電は命の危機に直結するため、電気工事は資格がないとやってはいけないことになっています。
家庭のことや普段使う電車のこと、少し知識をつけて安心して日常を過ごしたいですよね!
今回の記事の作成に当たって、以下の動画や本を参考にしましたので、いまいち分からなかったという方はそちらも合わせて見てみてください!
アースについてはこちらの動画
絶縁測定についてはこちらの動画(かなり長めの動画です)
アースや絶縁測定は少しわかりづらく、きちんと理解している人は少ないです
私も認識違いがあったら教えて下さい…
電気のことを理解できたら、もう一度電車が動く仕組みについて学んでみましょう!きっと理解度が違ってきますよ!
それでは、ありがとうございました!