こんにちは!今回はエアセクションについてお話しします!
エアセクションってなに?
なんで電車が止まっちゃうの?
こんな疑問にお答えします!
エアセクションとは2つの変電所から電気を送るための架線が2本並ぶ継ぎ目のことです。変電所Aと変電所Bの架線が交わるところといったイメージです。
エアセクションではこの2本の架線が重なってしまうために問題が起きてしまうのですが、今回はそのことについて分かりやすく解説します!
- エアセクションとは?
- エアセクションで架線が断線するメカニズム
- エアセクションで電車が停車してしまう理由
エアセクションは処置を間違えると架線切断にもつながってしまう大事なこと!しっかりと理解しておこう!
それでは、よろしくお願いします!
エアセクションとは?
エアセクションとは2つの変電所から送られてくる架線が交わる継ぎ目です。エアセクションについて理解するには
がポイントになります。もし分からない方は、それぞれのリンクから解説の記事を見てみてくださいね。
簡単に言うと、電車を動かすための電気は
変電所→架線→パンタグラフ→車両
の順で流れてきます。電車はとても長い距離を走るので、1つの変電所ですべてをまかなうことはできません。そのため、電車を走らせるためにいくつも変電所が存在しますが、変電所Aと変電所Bの架線がつながるところが「エアセクション」になります。
エアセクションでは基本的には停止してはいけないことになっています。それはエアセクションでパンタグラフが上がった状態で停止していると、架線が断線してしまう可能性があるから。
エアセクションとは何かわかったところで、ここからはなぜエアセクションで架線が断線するのか。そのメカニズムについてお話しします!
エアセクションで架線が断線するメカニズム
エアセクションで架線が断線するメカニズムは2パターンあります。それは
- 片方の架線が離線していてアークが発生した場合
- 電位差により架線に熱が発生し、架線の強度が下がった場合
が考えられます。この時に大事なのが「アーク」と「電位差」になります。断線のメカニズムを考える前に、「アーク」と「電位差」について、そして変電所Aと変電所Bでの電位差についてお話しします!
電位差ってなに?
電気には「電圧」という要素があります。電圧は電気がどれくらいの高さにあるか、あるいはどのくらいの強さで電気を流すかといった意味があります。単位はV(ボルト)です。
2つの電気の電圧の差のことを「電位差」と言います。
例えば250Vの電気と150Vの電気の間の電位差は100Vといった具合になります。
詳しくは電気のオームの法則の記事でお話ししていますので、ぜひご覧いただければと思います。
電気のアークとは?
電気には電圧の高いところから低いところに流れようとする性質があります。そして電気が流れる導体同士が接触していなくても、電圧の高いところから低いところに空気中で流れてしまうことがあります。これを「アーク放電」と言います。
アークが発生すると、強い光とともに大きな電気が流れます。
身近な例だと、コンセントにプラグを差し込もうとしたときに、ピカッと光ったことはありませんか?あれがアークです!
家庭用のコンセントの場合、電圧は100Vです。まだ電気が流れていないプラグ側は0Vなので、電位差は100Vとなります。このように電位差があるときに、コンセントを差し込む直前に空気を通って電気が流れてしまうのが「アーク」になります。
アークが発生すると、大きな電気が流れてしまい、熱が発生します。このアークが架線を溶断してしまう原因の一つです。
では2つの変電所の架線の間に電位差が発生してしまうのか、お話しします。
なぜ変電所Aと変電所Bの間に電位差が生まれるのか?
普通の理科の授業では考慮しませんが、架線のような電線は流れるだけで少しずつ電気エネルギーを消耗しています。これは電線も小さい抵抗になっているためです。
人間が広い道でも狭い道でも歩けばエネルギーを消耗するようなものでしょうか
電線の距離が長くなるほど電気エネルギーを消耗し、電圧は下がっていきます。これを「電圧降下」と言います。
また例えば、変電所Aの区間には列車が2本、変電所Bの区間には列車が3本走っているとしたら、それによっても架線の電圧は変化します。つまり
- 変電所から列車までの距離
- 変電所の区間にいる列車の本数
によって架線の電圧は変化するということです!そのため変電所Aと変電所Bの間には電位差が生まれます。
この電位差があることによって問題が発生してしまいます。次は先ほでお話しした、架線が断線する2つの原因についてお話しします。
片方の架線が離線していてアークが発生した場合
架線の状態もすべて均一になっているわけではないので、少しでも架線とパンタグラフの間にすき間があるとアークが発生してしまいます。
例えば変電所Aの架線電圧が1400V、変電所Bの架線電圧が1600Vの場合で、変電所Aの架線にのみパンタグラフが接触しているとすると
このようなイメージでアークが発生してしまい、架線が溶断してしまいます。
電位差により架線に熱が発生し、架線の強度が下がった場合
もう一つの原因として、2つの変電所の架線が両方ともパンタグラフと接触していた場合、電位差がある架線の電気はパンタグラフを通して短絡されます。電圧の高い方から低い方に電気が流れようとするので、電気が流れることによって架線は熱を持ってしまいます。
架線はたるみが発生しないように適度な力で引っ張られています。その引っ張りの力と熱があいまって断線につながってしまいます。
以上がエアセクションで架線が断線してしまうメカニズムになります。
続いてはエアセクションで停車すると長時間動かなくなってしまう理由をお話しします!
エアセクションで電車が停車する理由
基本的には運転士さんはエアセクションには停車しないように運転をします。しかし緊急停止装置が押されたり、防護無線が発報されるなどの列車防護の手配がとられた時に、意図せずエアセクションに停車しなければならない時があります。
このエアセクションで停車してしまった時にパンタグラフが上がったままだと、先ほどお話しした断線につながってしまいます。そのため、エアセクションで停車してしまった際には、一度パンタグラフをすべて下げることをします。
そしてエアセクションにかかっていないパンタグラフのみを上昇させて少しだけ移動し、エアセクションを脱出したらすべてのパンタグラフを上昇させてはじめて運転再開となります。
以上がエアセクションの処置をすることになると運転再開までに時間がかかってしまう理由です。
エアセクションの処置を間違えてしまった過去のできごと
2015年8月4日にJR京浜東北・根岸線においてエアセクションの処置を誤ったことにより架線が断線し、近くで花火大会をやっていたこともあり、約35万人に影響を与える事故が発生しました。
これはエアセクションで停車してしまった列車が、あやまって列車を起動させてしまったことにより大きな電気が流れて架線が断線してしまい起こった事故になります。
このような事故は過去に何度か起きていて、運転士の教育の徹底や、運転台でエアセクションのアナウンスが流れるようになるなど、様々な対策が取られています。
まとめ:エアセクションの仕組みを知って、もし電車が停まってしまってもイライラせずに待とう!
今回はエアセクションの仕組みや断線のメカニズムについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
普段利用する電車においても、エアセクションで停車してしまい、運転再開まで時間がかかることがあります。
そんな時でも仕組みを理解していることで、不安に駆られず許容していただけたら幸いです。
今回の話が難しかった方は、パンタグラフや架線、電圧などの話も記事にしておりますので、ぜひ合わせてご覧いただければと思います。
※この記事に関してご質問をいくつかいただいたので、Q&Aのエアセクションについてのところにまとめてあります。ぜひそちも合わせてご覧いただき、疑問が解決できれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!