こんにちは!今回は電車のマスコン(主幹制御器)についてお話しします!
マスコンってなに?
仕組みと役割が知りたい!
こんな疑問にお答えします!
マスコンとは運転士さんが電車を動かしたり、停車させるためのハンドルのことです。マスコンは「マスターコントローラー(Master Controller)」の略で、日本語では「主幹制御器」と言います。
マスコンは電車の操縦部分、電車でGO!や鉄道博物館のシミュレーターなどで触ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?まさに運転の花形とも言える鉄道部品ですね!
そんなマスコンの仕組みや役割についてお話しします!
- マスコンとは
- マスコンの種類について
- マスコンの仕組みについて
マスコンの仕組みを知って、運転士さんに一歩近づこう!
それでは、よろしくお願いします!
電車のマスコンとは?役割について
マスコンとは「マスターコントローラー(Master Controller)」の略で、日本語では「主幹制御器」と言います。その名前のとおり、運転士さんが電車の力行(加速)とブレーキを制御するハンドル部分になります。
※電車では車両を加速させることを「力行(りきこう・りっこう)」と言います。
電車の先頭車両に設置されていて、運転台設備の中でももっとも大きな機器になります。マスコンには
- 前後逆転ハンドル(レバーサー)
- 力行ハンドル
- ブレーキハンドル
が基本設備として備わっています。順番に説明していきます!
前後逆転ハンドル(レバーサー)
前後逆転ハンドルはレバーサー(Reversal)とも言い、電車の前後どちらに進むかを決めるためのハンドルになります。自動車で言うシフトレバーの役割です。
前進する場合はハンドルを前に、後退する場合はハンドルを後ろに倒すことで電車が進む方向を決めています。
例えば1号車が先頭車両で運転士さんが乗っているけど
- 基本的には前に進むので逆転ハンドルは「前」
- 停止位置を行き過ぎてしまった場合などは逆転ハンドルは「後」
といったように扱います。
似たようなもので、運転台選択スイッチ(キャブセス(Cab Select Switch))というものがあります。これは列車の編成の中で、どちらの車両が先頭車両と最後尾車両になるかを決めるためのスイッチになります。
例えば山手線では
- 内回りの場合、11号車が先頭、1号車が最後尾
- 外回りの場合、1号車が先頭、11号車が最後尾
となります。前後逆転ハンドル(レバーサー)と運転台選択スイッチ(キャブセス)は似ていて間違えやすいので、混同しないように注意しましょう!
力行ハンドル
力行ハンドルは電車が力行(加速)するためのハンドルです。自動車で言うとアクセルになります。
よく運転士さんが
出発進行~!
と言ったあとにがらがらと動かすハンドルが力行ハンドルになります。
ハンドルには段階があり、「ノッチ(Notch)」と呼ばれます。1ノッチ、2ノッチと段階を踏んでいきます。ノッチには「刻む」いう意味もあるため使われている言葉です。
ノッチの数が大きくなるほど加速度が上がっていき、速度が上がっていきます。ノッチの最大数は電車によって異なります。
またNotchの頭文字をとって、1N、2N…と表記したりもします。
自動車では踏み込む力で調整しますが、電車ではノッチがあるのが特徴的ですね!
ブレーキハンドル
ブレーキハンドルは電車がブレーキをかける(減速する)ためのハンドルです。自動車で言うとブレーキペダルですね。
ブレーキハンドルは力行ハンドルと同様にノッチがあります。しかし古いタイプのマスコンではノッチのように段階が決まっておらず、角度によってブレーキ力が変わるハンドルもあります。
電車には安全性を考慮して様々な種類のブレーキがありますが、ブレーキハンドルを扱うことで動作するブレーキは、「常用ブレーキ」「非常ブレーキ」の2種類になります。
常用ブレーキはとは、基本的な運転において扱うブレーキです。一方で非常ブレーキとは緊急停止する際に扱うブレーキです。
常用ブレーキは力行と同じでノッチや角度でブレーキ力が変わりますが、非常ブレーキにはノッチや角度がなく、強いブレーキ力が動作する仕組みになっています。
電車のブレーキの仕組みについても記事を書いておりますので、ぜひ合わせてご覧いただければと思います。
以上が基本的なマスコンの構成部品になります。その他にも自動運転(ATO)用やワンマン運転用のボタンが付いていたりしますが、今回は省略いたします。
抑速ブレーキや勾配起動(勾配ブレーキ)に関しては後述いたします。
マスコンには様々なタイプがあります。ここからはマスコンの種類についてお話しします!
電車のマスコンの種類
マスコンにはタイプがいくつかあります。まずは先ほどの力行・ブレーキハンドルについて
- 力行ハンドルとブレーキハンドルが一体になっている「ワンハンドルマスコン」
- 力行ハンドルとブレーキハンドルが別々になっている「ツーハンドルマスコン」
の2つに分かれます。またマスコンの動作の仕組みについて
- ハンドルの動作とともにカムが動いて接点をオンオフさせる「有接点マスコン」
- ハンドルの動作(角度)をエンコーダが読み取り出力する「無接点マスコン」
の2つに分かれます。こちらは後ほどのマスコンの仕組みの章で詳しく解説いたします。ここでは「ワンハンドルマスコン」と「ツーハンドルマスコン」についてお話しします!
力行とブレーキの両立!ツーハンドルマスコンとは
ツーハンドルマスコンは力行ハンドルとブレーキハンドルの2つが取り付けられたマスコンです。従来のマスコンはこのタイプでした。
電車は電気の力を動力源に動くので、力行ハンドルでは電気の力をコントロールすることが目的になります。ハンドルのノッチ数に応じて接点をオンオフさせることで制御装置に指令を送り、電気の量を調整していました。
一方で、電車のブレーキは空気の力を使ってブレーキをかけています。古いタイプの電車ではブレーキハンドルのところに空気が入ってきていて、ハンドルの角度によって空気の流れる量をコントロールすることでブレーキ力を調整していました。
電気と空気でそれぞれのハンドルの仕組みが違っていたため、従来のマスコンではツーハンドルマスコンが普通でした。
しかし、現在ではブレーキは「電気指令式」と言って、力行と同じようにブレーキハンドルのノッチ数や角度によって接点をオンオフさせることで、ブレーキ制御装置にブレーキ力の信号を送り、ブレーキを出力する方式が主流となってきました。これによって
- 配管が少なくなるので、構造がシンプルで製造が簡単になる
- 力行ハンドルと仕組みが同じになることでワンハンドルにすることが可能になる
といったメリットがありました。しかし、ツーハンドルマスコンでは坂道などの勾配がついた場面で発車する際に、ブレーキをかけたまま力行出来るといったメリットがありました。
ワンハンドルマスコンでは「勾配起動スイッチ(勾配ブレーキ)」をつけることでこの問題を解決していますが、ワンハンドルとツーハンドルが混在してしまうと運転士さんも大変だということもあり、ツーハンドルマスコンを今でも採用している鉄道会社も多くあります。
力行もブレーキもこれ一本!ワンハンドルマスコンとは
ワンハンドルマスコンは力行ハンドルとブレーキハンドルが一体になったマスコンになります。
- 手前に引けば力行
- 奥に倒せばブレーキ
がかかるようになっています。ワンハンドルマスコンの良いところはシンプルで運転台がスッキリすることです。
ワンハンドルマスコンではツーハンドルマスコンのように坂道発進が難しいので、マスコンハンドルとは別に「勾配起動スイッチ(勾配ブレーキ)」というものが付いています。このスイッチを押すことでブレーキがかかり、マスコンハンドルを扱ってブレーキがかかった状態で力行をすることができます。
以上がツーハンドルマスコンとワンハンドルマスコンの説明になります!ここからはマスコンの仕組みについてお話しします!
マスコンの仕組み
マスコンにはノッチやハンドル角度に合わせてカムが回転して接点をオンオフする「有接点マスコン」とハンドルの動きをエンコーダで読み取って信号を出力する「無接点マスコン」があります。
それぞれについてお話しします!
カムが回転して接点を構成する「有接点マスコン」の仕組み
有接点マスコンはハンドル動きに合わせて、同じ軸でつながった「カム」が回転することで接点をオンオフさせます。
カムとは運動の方向を変換する機械装置のことを言います。マスコンの場合はハンドルの動きに合わせて動く軸の回転運動を、接点をオンオフさせる前後運動に変換する役割をはたしています。イメージ図は以下のようになります。
カムが回転することで接点の動きを出しています。
- カムの切り欠きがある部分ではローラーを押さないので接点はオフ
- カムの切り欠きがない部分ではローラーを押して、接点をオン
このようにハンドルのノッチ数や角度に応じたカムの動きによって、たくさんの接点がオンしたりオフしたりすることで電気信号として抵抗制御の制御装置やVVVFインバータに加速やブレーキの情報を送っています。
有接点マスコンでは接点のオンオフ回数が多いため、メンテナンスにおいては接点の点検・清掃が必要になります。
エンコーダが動きを読み取る「無接点マスコン」の仕組み
無接点マスコンではノッチやハンドルの角度を「エンコーダ」が読み取り、電気信号として出力しています。
エンコーダとは機械的な動き・移動量・角度などをセンサーで読み取り、電気信号として情報を送る装置のことを言います。
エンコーダは例えばエレベータに使われています。どのくらいモーターが回転・移動したら何階なのか?などを読み取って私たちに教えてくれます。
このエンコーダが活躍してくれることにより、カムや接点が必要なく、シンプルな中身になります。機械的よりも電子的なメンテナンスが必要になります。
まとめ:電車のマスコンの仕組みを知って、運転士さんに一歩近づこう!
今回は電車のマスコンの仕組みについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
マスコンについて初めて知った方も、いろんなタイプがあることを知った方も、ぜひ一度興味を持って運転台をのぞいて見ていただけたらと思います!
※もちろん運転士さんの邪魔にならないようにお願いいたします。
また、鉄道博物館などに行くと運転シミュレータなどがありますし、ゲームセンターで運転ゲームをやってみても面白いと思います!
マスコンの仕組みを知るだけで電車について興味が持てると思うので、この機会に電車が動く仕組みなどにも興味を持っていただけたら幸いです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!