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電車の回生ブレーキの仕組みとは?進化する電車の省エネ技術!

電車の回生ブレーキの仕組みとは?進化する電車の省エネ技術!

こんにちは!今回は電車のブレーキの1つ「回生ブレーキ」について

疑問を持つ子

回生ブレーキってなに?

悩む子

どんな仕組みなんだろう

こんな疑問を解決します!回生ブレーキとは一言で言うと、「ブレーキをかけながら発電できちゃうとってもエコなブレーキ」です!省エネルギーなので、SDGsの観点からも非常に注目されています。
そんな電車の回生ブレーキの仕組みについて、電車整備士歴10年の筆者が解説します!

この記事でわかること
  • 電車の回生ブレーキとは?
  • 回生ブレーキと発電ブレーキの違い
  • 回生ブレーキの仕組み
  • 回生ブレーキのデメリット
シモ

今後ますます注目される電車の回生ブレーキについて理解しよう!

それでは、よろしくお願いします!

目次

電車の回生ブレーキとは?

電車の回生ブレーキとは「発電することでブレーキ力を得られ、発電した電気をいろんなことに有効活用するブレーキ」です!

電車のブレーキはおもに

  • 摩擦抵抗などでブレーキをかける機械式ブレーキ
  • モーターを発電機にすることでブレーキをかける電気ブレーキ

に分類されます。回生ブレーキは電気ブレーキの一種です。まずはなぜモーターを発電機にするとブレーキがかかるのかを見ていきましょう!

機械式ブレーキについて詳しく解説している記事はこちら

電車の電気ブレーキの仕組み

電車のモーターは電気をもらって回転することで電車を動かしています。言い換えると

電気エネルギーを運動(回転)エネルギーに変えている

ということが出来ます。その反対に発電機とは回転することで電気を作り出しています。つまり

運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに変えている

ということになります。モーターと発電機についてはフレミングの法則の記事で詳しく説明してます!

ここで自転車を乗っているときのことを考えると、暗くなってきてライトをつけます。そうすると自転車が重くなったように感じた経験はありませんか?
あれはまさに自転車の回転エネルギーの一部を発電する電気エネルギーとしてもらっているからになります!

自転車の回転エネルギー = こいでいる回転エネルギー ー ライトをつけるための電気エネルギー

ライトのON・OFFによる自転車の回転エネルギーの違い
ライトのON・OFFによる自転車の回転エネルギーの違い

ということになります。なので発電した分だけエネルギーを取られてしまうので、重く感じてしまいます(スピードが落ちてしまう)。これが電気ブレーキの正体になります。

この電気ブレーキはさらに「発電ブレーキ」「回生ブレーキ」に分かれます。それぞれについて見ていきましょう!

回生ブレーキと発電ブレーキの違い

電車の電気ブレーキは

  • 発電した電気エネルギーを抵抗器で熱エネルギーに変換して放熱する発電ブレーキ
  • 発電した電気エネルギーをほかの目的で使用する回生ブレーキ

に分かれます。発電することでブレーキ力を得ることが出来ますが、発電した電気の使い道によって異なるということですね!

発電ブレーキでは発電した電気を抵抗器を通すことで熱エネルギーに変えて放熱します。作りは簡単なのですが、発電した電気を有効に活用できないというデメリットがあります。なぜ抵抗器を通すと熱に変わるのかは電気の抵抗とは?の記事で書いておりますので、ご覧いただければと思います。

一方で回生ブレーキは

  • 他の電車の力行(加速)に使う
  • バッテリーの充電をする

といったように発電した電気を有効活用することができます。こういった面から回生ブレーキは省エネルギーのブレーキとして近年では技術開発が進んでいます。

ちなみに「回生」という言葉は「生き返ること」を意味します。これはモーターを回転させるために一度もらった電気でしたが、モーターを発電機として利用し、発電した電気を他の電車などで再利用することから「回生ブレーキ」となっています。

発電ブレーキ
回生ブレーキ
  • 構造は簡単
  • 発電した電気が無駄になってしまう
  • 構造は少し複雑
  • 発電した電気を他の電車で再利用できる
発電ブレーキと回生ブレーキの違い
発電ブレーキと回生ブレーキの違い

ここからは回生ブレーキの具体的な仕組みについて見ていきましょう!

電車の回生ブレーキの仕組み

電車で回生ブレーキを使用する仕組みとして重要になるのが「VVVFインバータ」という装置になります。VVVFインバータは電車が力行(加速)する際に、直流電気を三相交流に変換して電車の速度やトルク(パワー)をコントロールする装置ですが、回生ブレーキを使用する際にもとても活躍する装置です。
VVVFというのは「可変電圧可変周波数(Variable Voltage Variable Frequency)」の略で、電圧と周波数を自在にコントロールできるという意味です。

VVVFインバータの詳しい仕組みについてはこちらの記事をご覧いただければと思います。

回生ブレーキで発電した電気を他の電車や駅の電気設備で使用するためには、パンタグラフから架線を通して電気を流していきます。VVVFインバータがなぜ重要なのかと言うと、回生ブレーキによって発電した電気を架線に返す際に

  • 他の電車で使用する電気よりも高い電圧の電気を発電する
  • 直流電化区間の場合、誘導発電機で発電した交流電気を直流電気に変換する
  • 交流電化区間の場合、発電した電気の周波数を使用する電車の周波数に合わせる

必要があります。

シモ

これらを解決してくれるのがVVVFインバータ
順番にみていきましょう!

回生ブレーキでVVVFインバータが大事な理由①電圧調整

電気は電圧の高いところから低いところに流れる性質があるため、他の電車で使うよりも高い電圧の電気を発電して送る必要があります。

例えば電車で使用する電気が直流1500Vである場合
回生ブレーキで発電する電気は1500V以上である必要がある

VVVFインバータでは可変電圧(VV:Variable Voltage)の特性を生かしてこの電圧の調整を行ってくれて、回生ブレーキのブレーキ力もコントロールしてくれています。

回生ブレーキでVVVFインバータが大事な理由②交流→直流

現在の電車では三相交流を使用する誘導電動機が多く普及してきています。この誘導電動機を使用して電気を発電する場合、発電する電気は交流になります。直流電化区間で電車が使用するのは直流電気なので、発電した交流電気を直流電気に変換する必要があります。

VVVFインバータではこの交流→直流の変換をおこなってくれます!

インバータというのは「直流→交流に変換する装置」を意味しますが、ここでは「交流→直流に変換する装置」である「コンバータ」として活躍してくれています!

回生ブレーキでVVVFインバータが大事な理由③周波数を合わせる

交流電化区間の場合は、回生ブレーキで発電した交流電気の周波数を使用する電車の周波数と合わせなくてはなりません。

例えば東日本の交流20000Vで50Hzに場合
回生ブレーキで発電する電気も50Hzにする必要がある

VVVFインバータでは可変周波数(VF:Variable Frequency)の特性を生かして、周波数の調整を行っています。

メロディを奏でるVVVFインバータ「ドレミファインバータ」を使用した京急の電車についての記事はこちら

以上が電車の回生ブレーキの仕組みになります。回生ブレーキにはまだまだ解決しなければならないデメリットもありますので、次は電車の回生ブレーキのデメリットを見ていきましょう!

電車の回生ブレーキのデメリット

電車の回生ブレーキは損失となっていた電気を回生することによって非常に省エネ、エコであるといったメリットがあります。一方でデメリットもあり

  • 近くに電気を使用する電車がいないと回生ブレーキが使えない
  • 遅い速度の時にはブレーキ力が弱くなる

ことが挙げられます。順番に見てきましょう!

電車の回生ブレーキのデメリット①近くに電車がない!

電車の回生ブレーキは自動車のもとの違って、回生した電気を主に他の電車で使用します。そのため

  • 近くに電車が走っていない
  • 近くの電車が力行(加速)していない

ような状況では回生した電気の使いどころがないため、ブレーキ力を得ることができなくなってしまいます。首都圏などの都心部では電車が短い間隔で走っているためこのような問題は起こりづらいですが、郊外の電車では課題となっています。

電車の回生ブレーキのデメリット②低速域ではブレーキ力が不十分

回生ブレーキは発電する電気が大きいほど大きなブレーキ力を得ることが出来ます。これは回転エネルギーが大きいほど大きな電気エネルギーになる=大きなブレーキ力を得られるということですね。

回転力が大きい = 発電する電気が大きい = ブレーキ力が大きい

なので、回転エネルギーが小さくなる低速域では得られる電気エネルギーは小さくなってしまいます。これは自転車をゆっくりこぐとライトの光が弱くなってしまう現象と同じです。

電車においては低速域、つまり駅に停車する際などに十分なブレーキ力を得られないということになってしまいます。

以上のような課題に対して、解決策があるのでご紹介していきます!

電車の回生ブレーキの課題解決策①ハイブリット車両・蓄電池車両

近くに電車がいないと回生ブレーキが使用できないことに対しての解決策として

  • 駅や変電所に蓄電池設備を設ける
  • 発電ブレーキを併用する
  • 電車のバッテリーの充電に使用する

などが挙げられます。近年ではディーゼルエンジンとバッテリーを併用する「ハイブリット車両」として回生電力を有効活用している車両もあります。JR東日本の秋田・青森を走る「リゾートしらかみHB-E300系」2022年度にデビューするJR東海の特急車両「HC-85系」などがあり、続々と新技術の開発が進められています。

また電化区間では充電しながら走行し、非電化区間では充電した電気を使って走行する「蓄電池車両」も開発されています。これにはJR東日本の「烏山線EV-E301系」JR九州の「香椎線BEC-819系」などがあります。

電車の回生ブレーキの課題解決策②電空ブレンディング制御

また、低速域で十分なブレーキ力が得られないことに対しては、機械式ブレーキを併用することで編成全体としてのブレーキ力を確保しています。
具体的には高速域では回生ブレーキを優先させ、低速域で不足する分を機械式ブレーキでまかなうといった計算と配分をしながら走行しています。このようにすることで、最大限省エネで走行できるように努めています。

このような制御方法を「電空ブレンディング制御」と呼びます。

まとめ:電車の回生ブレーキの仕組みを知って、SDGsに貢献しよう!

今回は電車の回生ブレーキについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?

実は自転車のライトと似ていたりして、その仕組みを知ることでなにかSDGsに貢献できるかもしれませんね!

その他の電車の動く仕組み鉄道会社の仕事についても発信しておりますので、ぜひ合わせてご覧いただければと思います。

シモ

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

電車を好きになろうブログでは、鉄道マン歴10年の筆者が鉄道に関することを記事にしております。

ぜひ他の記事と合わせて鉄道に興味を持っていただけたら幸いです!

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