こんにちは!
直流電車と交流電車があるって聞いたけど、何が違うの?
それぞれのメリットが知りたいな
今回はこんな疑問を解決します!
直流と交流は電気の送り方の違いです!
それぞれにメリットとデメリットがありますよ!
- 直流とはプラスからマイナスへと一方向にしか流れない電気のこと
- 交流とはプラスからマイナスへと電気が入れ替わっていき、時間ごとに流れる電圧が変わる電気のこと
- 直流電車・交流電車とは変電所からの架線電源をどちらで受け取るかの違い
- 直流電車・交流電車にはそれぞれメリット・デメリットがあり、使い分けられている
10年間電車整備士をしていて、直流電車と交流電車のどちらも整備経験がある筆者がお話しします!
それでは、よろしくお願いします!
直流電車と交流電車の違い(基礎編)
電気には直流と交流があります。これは電気の流れ方の違いで、それぞれに特徴があります。変電所から架線を通して電車に送る電気にも直流と交流があり、それぞれ「直流電車」「交流電車」として使い分けられています。
ではそもそも直流と交流ってどんな電気なんでしょうか?それぞれについてお話します!
直流の電気とは?
直流の電気とは、プラスからマイナスへと一方向にしか流れない電気のことです。身近なものだと乾電池が直流の電気になります。英語で言うとDirect Current(DC)です。
単1〜5などの乾電池は直流の1.5V
また直流の電気は時間によって電圧が変化せずに一定の電気が流れることも特徴です。以下の図ようなイメージになります。
電車の場合は架線からの直流電源は1500V、750V、600Vの電圧を使用している場合があり、本州の都市部ではこのスタイルが多く採用されています。
交流の電気とは?
交流の電気とは、プラスからマイナスへと電気が入れ替わっていき、時間ごとに流れる電圧が変わる電気のことです。身近なものだと家庭用のコンセントが交流の電気になります。英語で言うとAlternative Current(AC)です。
家庭用のコンセントは交流の100V
ちなみにゲーム機やパソコン動かす際に使う電源ケーブルには「ACアダプタ」というものがついていて、交流の電気を直流の電気に変換して機器を動かしています。以下の図のようなイメージになります。
交流の場合は常に電圧が変化しているので、実際に使用している電気を平均で計算した「実効値」と呼ばれる電圧が表示されます。実効値は直流に換算するといくらか?というイメージです。
なので直流100Vと交流100Vを使用した場合の電球の明るさは同じになります!
交流ではプラスとマイナスが1秒間に何回入れ替わるかを「Hz(ヘルツ)」という単位で表します。
東日本では50[Hz]、西日本では60[Hz]の交流がコンセントから流れています。つまり1秒間に50回か60回もプラスとマイナスが入れ替わっているんですね!
電車の場合は架線からの交流電源だと20000V、25000Vの電圧を使用している場合があり、地方路線や新幹線ではこのスタイルを採用しています。
直流電車と交流電車の違い(変電所編)
では直流と交流の違いが分かったところで、電車で使用する場合にはどういった違いがあるのか。まずは電車にどうやって電気が届くのかというと
といった順番で流れてきます。詳しい話は電車の動力源は電気!その電気はどこから来るの?で解説しております。
この電気の流れではそれぞれにポイントがあります。
- 発電所→変電所では交流の電気だと変圧しやすいので効率が良い
- 電車の場合、変電所からの電気は直流・交流の2種類ある
- 電車は直流電気を使ってモーターを回している
順番に見ていきましょう!
発電所からの電気は交流だと送電効率が良い
発電所の電気は50万ボルトや20万ボルトといった超高圧の電気で変電所まで送ります。なぜ超高圧で送電しているかと言うと電圧が高いほど送電の効率が良いからです!
例えば電気は送るときに50万ボルトあっても、送っている途中で損失が発生してしまい、1万ボルトになってしまうといったイメージです。
このように、送電途中で損失してしまうことを「電圧降下」と言います。
次に変電所では何をしているかと言うと、超高圧の電気をちょうど良い電圧に調整する役割があります。この時、直流の電気よりも交流の方が変圧が簡単であるという特徴があります。直流の場合は設備的に費用がかかったり、変圧時にロスが生じてしまいます。そのため、変電所までの電気は交流で送電されます。
電車の場合は変電所からの電気は直流と交流の2種類がある!
発電所→変電所は交流での送電でしたが、変電所から電車に電気を送るのには直流と交流両方の場合があります。では直流変電所と交流変電所では何が違うのでしょうか?
直流変電所の特徴
交流変電所の特徴
電車のモーターを回すためには直流の電気が必要
電車のモーターを回すためには直流の電気が必要ということも覚えておきましょう!これは直流を交流に変換する「インバータ」という装置を用いることで、誘導電動機(交流モーター)を制御することができるからです!
インバーターの詳しい話はこちらの記事を参考にしてみてください!
直流電車では
架線からの直流電源→インバータ装置で三相交流を作成→誘導電動機
という流れでモーターに電気が流れます。一方で交流電車では
架線からの交流電源→変圧器にて電圧を下げる→コンバータ装置で直流に変換→インバータ装置で三相交流を作成→誘導電動機
といったように、交流電車では車両側の手間が増えてしまいます。
以上を踏まえたうえ直流電車・交流電車のメリット・デメリットをそれぞれお話しします!
直流電車のメリット・デメリット
- 車両に変圧器を搭載する必要がないので、構造が簡素にできる
- 直流の電気は電圧降下を起こしやすく、変電所の間隔を狭くする必要がある(多くの変電設備が必要)
- 変電所などの地上設備が複雑になってしまう
直流電車ではモーターを回すのに必要な直流の電気をそのまま受け取っているので、交流に変換したり、変圧する必要がありません。なので車両の構造がシンプルにできます!
反対に直流の電気は送電効率が落ちてしまい、また変圧が大変なので設備が複雑になり費用がかかってしまうといったデメリットがあります。
交流電車のメリット・デメリット
- 一般的な周波数(商用周波数)をそのまま使用できるので、地上設備が簡素にできる
- 高圧での送電が可能なので、変電所の間隔を広く取れる(変電設備が少なくて済む)
- 取り込んだ交流を車両の中で直流に変換する必要があるため、車両の設備が複雑になってしまう
- 高圧での送電になるため、危険度が高い
交流電車では家庭用に使う電気と同じ周波数のものを使用できます。また直流に比べて送電効率が良いので、変電所の間隔を広くしても電圧降下してもロスが少ないといったメリットがあります。
反対にモーターを回すために取り込んだ交流電気を直流電気に変換しなくてはならないので、電車の設備が複雑になってしまうといったデメリットがあります。また高圧の電気が送られてくるので、万が一の時の危険度が高いと言うこともあげられます。
ここで
なんで交流は高圧で送電できるの?
という疑問があると思います。そちらについては変圧や電圧降下の記事で解説しておりますので、合わせてご覧ください!
また、交流区間と直流区間の両方を走行することができる交直流電車というものもあります!交直流電車の仕組みについてもぜひ合わせてご覧いただければと思います。
まとめ:直流電車と交流電車の違いを理解し、それぞれメリット・デメリットを知ろう!
- 直流とはプラスからマイナスへと一方向にしか流れない電気のこと
- 交流とはプラスからマイナスへと電気が入れ替わっていき、時間ごとに流れる電圧が変わる電気のこと
- 直流電車・交流電車とは変電所からの架線電源をどちらで受け取るかの違い
- 直流電車・交流電車にはそれぞれメリット・デメリットがあり、使い分けられている
今回は直流と交流の違いについてお話ししましたが、ご理解いただけたでしょうか?電気の流れは目に見えないので、実感しづらい部分が多いと思いますがイメージを膨らますことが大切です。
分からないことがあれば
気軽にコメントをください!
その他、架線からの電気で電車が動く流れについてはこちらの記事をご参照ください!
それでは、ありがとうございました!