こんにちは!今回は鉄道に異常が起きた際に、お客さまを守る「列車防護」についてお話しします!
列車防護ってなに?
異常時にはどうやって守ってくれるんだろう
こんな疑問にお答えします!鉄道では異常時に備えて
- 日々乗務員さんが訓練を行う
- 車両には緊急装置の搭載
- 駅や信号では緊急停止装置の設置
などの取り組みが義務付けられております。鉄道は他の乗り物と違い、レールの上を走ることで安全が守られている反面、緊急時には列車を停止するしか措置がないといった面もあります。そのため異常時には、当該列車や周囲の関係列車を迅速に、確実に停止させる「列車防護」の措置がとても重要です。
今回はそんな「列車防護」について、電車整備士歴10年の筆者が車両の目線で解説します!
- 鉄道の列車防護とは
- 福知山線の脱線事故について
- 列車防護をするための車両の装置
普段利用する鉄道の安全の取り組みを知って、安心して乗車しよう!
それでは、よろしくお願いします!
鉄道の列車防護とは
列車防護については、「鉄道の技術上の基準を定める省令」にて、以下のように定められています。
列車の停止を必要とする障害が発生した場合は、列車の非常制動距離を考慮し、停止信号の現示その他の進行してくる列車を速やかに停止させるための措置を講じなければならない
鉄道に関する技術上の基準を定める省令 第十章 運転 第二節 列車の運転 第百六条より
非常制動距離とは、非常ブレーキをかけた際に停止するまでの距離のことです。
停止信号の現示は、ただちに赤信号や×信号を送って停止させなさいということです。
簡単にまとめると
ということです。
この省令で定められた内容をもとに、さらに各鉄道事業者においてそれぞれのルール(実施基準)を設けて安全を確保しています。
福知山線の脱線事故について
列車防護をするための車両の装置について
列車防護するための車両に搭載されている装置として
- 防護無線
- 車両用信号炎管
- TE装置
- EB装置
- 軌道短絡器
などがあります。順番に解説します!
防護無線
防護無線は運転台に設置されている緊急用の無線です。
停止信号を電波によって発信し、その電波を発信した車両と電波を受信した車両で警報を鳴らすことで、緊急停止を知らせる無線装置です。受信範囲は地形や電波状況によって異なりますが、おおむね半径1km以内で受信可能となるように設計されています。(実際には5km以上離れた場所で受信することも…)
警報音が鳴った場合は運転士や車掌はただちに非常ブレーキをかけて列車を停止させます。「危ないと思ったらまず停止させる」ことで、周囲の被害が拡大しないようにしています。
ちなみにこの防護無線は国鉄(現JR)時代に起きた「三河島事故」がきっかけとなり導入されています。三河島事故については鉄道のATSの仕組みの記事でもお話ししています。
車両用信号炎管
車両用信号炎管は、非常事態が発生した際に赤色火炎を起こして接近する列車に異常を知らせる装置です。対向列車や後続列車への視認効果を大きくする目的で、車両の屋根上に取り付けられています。
車両用信号炎管は運転室の天井に備え付けられており、ハンドルを引くことでバネの力により発火装置を作用させて発炎信号を現示します。
車両用信号炎管の他にも、持ち運びができる「携帯用信号炎管」も運転室に備え付けてありますが、車両用信号炎管は携帯用信号炎管に比べると、約3倍の明るさがあるとされています。
TEボタン(緊急列車防護装置)
TE装置(緊急列車防護装置)とは運転中に非常事態が発生し、緊急に列車を停止させる必要があるときに使用する装置です。One Touch Emergency Deviceの略で、ワンタッチで発動させられることからTEボタンとも呼ばれます。
TEボタンを押すと
- 非常ブレーキ動作
- 主回路遮断
- パンタグラフ降下
- 汽笛吹鳴
- 防護無線の発報
- 車両用信号炎管の点火
- 滑走防止の砂撒き
などが一斉に作用します。よっぽどでなければ押すことはありませんが、車両基地ではTEボタンの動作確認も整備士が行っています!
EB装置(デッドマン)
EB装置はEmergency Brakeの略で、運転士によるハンドルなどの操作が一定時間ない場合に、警告ブザーを鳴らす装置です。また警告ブザーが鳴ってもさらに一定時間操作がない場合は非常ブレーキが動作します。
この装置は運転士の居眠りや気絶があった場合に停止させるための装置ですが、万が一死んでしまっても車両を停止させるという意味から「デッドマン装置」とも呼ばれます。
軌道短絡器
軌道短絡器は緊急時に軌道回路を短絡させることで、列車が進入できないという信号を送るための装置になります。軌道回路については以下の図をご覧ください。
本来は列車が区間に在線していることで信号電流の流れる軌道回路は短絡されており、赤信号が現示されます。これと同じ理屈で、軌道短絡器を用いて回路を短絡することで、赤信号を現示させて列車の進入を防ぐ仕組みとなっています。
まとめ:鉄道車両にはいろいろな列車防護の仕組みがある!仕組みを理解して安心して鉄道を利用しよう!
今回は鉄道の列車防護について、車両目線でお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
普段利用する鉄道には緊急時に備えたいろいろな仕組みや取り決めがあります。日本の鉄道が安全・安定的であると言われる理由ですね!
今までの事故などをふまえて、日々技術が進歩していき、より安全になっていく鉄道。その仕組みを理解して、安心してご利用いただければと思います。
その他の鉄道の安全を守る保安装置に関しても記事を書いておりますので、合わせてご覧いただければと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!