こんにちは!今回は交直流電車の仕組みについてお話しします!
交直流電車ってなに?
どんな仕組みなの?
こんな疑問にお答えします!
「交直流電車」とは、架線からの電源が交流である区間と直流である区間の両方を走ることが出来る電車のことです!電車が架線からもらう電気は直流と交流の2種類があることは別の記事で解説しておりますので、合わせてご覧いただければと思います。
交流区間と直流区間を両方走る交直流電車は、両方の区間を走るためにいろんな仕組みがついております。今回はそんな交直流電車の仕組みについてお話しします!
- 交直流電車とは?
- 交直流電車の仕組みについて
- 交直流電車はどこで乗れる?(日本の交直流区間一覧)
交直流電車の仕組みについて理解して、切り替え区間を楽しもう!
それでは、よろしくお願いします!
交直流電車とは?
日本では架線から電車に供給される電源には交流電源の区間と直流電源の区間があります。車両数が少ない都市間の区間では交流電源を採用し、車両が多く密集する都市部では直流電源を採用しています。これは
- 交流区間では変電所の数を少なくすることができる
- 直流区間では車両側の設備を少なくできる
といったメリットがあるためにそのようになっています。詳しくは直流区間と交流区間の違いをご覧いただければと思います。
交直流電車とは、この交流区間と直流区間のどちらも走行することができる電車のことを言います!つまり都市内を走行し、都市間の輸送までできてしまうわけですね!
では交直流電車はどんな仕組みで区間の切り替えを行っているのでしょうか?ここからは交直流電車の仕組みについて解説していきます!
交直流電車の搭載機器
交直流電車の仕組みを理解するうえで、大事な機器がいくつかあります。それは
- 交直切替器
- 空気遮断器(ABB)あるいは真空遮断器(VCB)
- 保護接地スイッチ
- ヒューズ
- 主変圧器
です。一つずつ解説します!
交直切替器
交直切替器は、名前の通り交流区間と直流区間の切り替えを行う装置です。運転台に切り替えスイッチがあり、運転士さんが操作します。
交流区間は20,000Vや25,000Vの高圧電源、直流区間では1,500Vなどの電源となっており、混ぜるな危険状態になりますので、車内の機器を守るために正しく切り替える必要があります。
切替器は屋根上についており、圧縮空気の力で切り替えを行っています。
空気遮断器(ABB)と真空遮断器(VCB)
空気遮断器ABB(Air Blast Breaker)と真空遮断器VCB(Vacuum Circuit Breaker)はどちらも遮断器です。遮断器とは通常時には電気の入り切りを行い、異常時には電気の遮断をすることで車内の電気機器を守る保護動作もしてくれる装置です。
電気を入り切りする際には、「アーク」と呼ばれる大きな電流が流れてしまいます。電源を切らずにコンセントからプラグを抜こうとするとバチっと光るあれもアークです。
電気の入り切りの際にアークが発生することによって接点が損傷してしまう可能性があるので、遮断器にはアークを吹き消す機能がついています。空気遮断器ACCと真空遮断器VCBそれぞれの仕組みは
- 空気遮断器ABB:圧縮空気の力でアークを吹き消す仕組み
- 真空遮断器VCB:真空中ではアークが拡散するという性質を利用してアーク消す仕組み
近年では真空遮断器VCBを採用する電車が増えていますが、どちらかが付いていれば車両の安全は保たれることになります。どちらの場合でも屋根上に取り付いています。
保護接地スイッチ
保護スイッチは架線電源とレールを直接つなぐスイッチで、これによって変電所が異常を検知し架線への送電を中止させることができます。パンタグラフや遮断器(ACBあるいはVCB)が故障して車内の回路が遮断できなかった際に、最終手段として使われる装置です。
保護スイッチは交流区間でのみ使用し、こちらも屋根上に取り付いています。
主ヒューズ
主ヒューズは決められた以上の電気が流れた時に切れるようになっていて、ヒューズより先の回路を守るための装置です。
この主ヒューズは交流回路に直流電気が流れてしまった時に動作して切れるようになっています。これは直流冒進と言って、交流区間から直流区間に進入する際に正しく回路が切り替わらなかったときに、主変圧器の焼損を防ぐための装置です。
ヒューズは動作すると溶断するようになっていますので、一度動作した場合には新品に交換する必要があります。主ヒューズが切れているかどうかは外観でわかるように表示器がついています。こちらも屋根上に取り付いています。
主変圧器
主変圧器は交流電源の25,000Vや20,000Vを電車で使用するために変圧(電圧を降下させる)ための装置です。
架線電源を受け取る方が一次側(入力)、電車で使用する方が二次側(出力)となっていてコイルの巻き数によって電圧の調整がされています。
詳しい仕組みを知りたい方は「ファラデーの法則」で検索してみてください!
主変圧器は床下に取り付いています。
それでは各機器について分かったところで、実際の交直流電車の切り替えがどのように行われているのか見ていきましょう!
交直流電車の仕組み
ここからは交流区間から直流区間に進入した際の切り替えの仕組みがどうなっているか見ていきましょう!ポイントはデッドセクション(死区間)と呼ばれる無電化区間が間にあることです!
交流区間から直流区間に進入する際に、いきなり交流から直流に切り替わるのではなく、デッドセクションと呼ばれる電気が流れていない区間があります。このデッドセクションを通過中に、車両は回路の切り替え準備をしています。これはミニ新幹線の仕組みで解説した交交セクションと同じです。
交流区間からデッドセクションに進入する前に、線路に「地上子」と呼ばれる信号発生装置で車両側に回路を切り替える必要があるという指令を発信することで、回路の切り替えを行っています。回路を切り替える際に、ABBまたはVCBを切ることで架線からの電気を間違って受け取らないように遮断しています。
また車両側は架線からの違った電源を受け取ってしまうと故障してしまう可能性があるので、基本的にはノッチオフ(惰行運転)することで、一時的に架線からの電気を受け取らないようにしています。
直流区間から交流区間に進入する際も同じ仕組みになりますが、特に交流区間から直流区間に進入する際には誤った動作をしてしまうと異常が発生します。
交流区間の方が電圧が高い(25,000Vか20,000V)のため電流は低いですが、直流区間の方が電圧が低い(1,500Vや1,000V)のため電流が高くなっています。そのため、交流回路を守るために主ヒューズが取り付けられています。
※以前はデッドセクション走行中は車内の照明が消えることがあったようですが、現在ではABBやVCBが切れる音以外は何事もなかったかのように通過します。
以上が交直流電車の仕組みになります!続いて交直流電車の特徴についてお話しします!
交直流電車の特徴
交直流電車の特徴は交流区間と直流区間の両方を走れること!はもちろんですが、他にも特徴がありますのでご紹介します。
- 交直流の両方の装置が必要になるため、コストが高い
- 直流区間を走行中は交流の変圧装置や整流装置は重り(デッドウェイト)になってしまう
- 交流の高圧を受電するため、絶縁性能を高くしなければならない
以上が、交直流電車の特徴になります。交直流の区間のどちらも走れるのでお客さまを長中距離輸送できる一方で、重量やコストがかさんでしまうため、少しエコでない一面があります。
どんな電車も一長一短!そこがまた面白いですね!
それでは最後に今回ご紹介した交直流電車にはどこで乗れるのか、ご紹介します!
交直流電車はどこで乗れる?日本の交直流電車の一覧
現在の日本にある交直流電車にはどんな電車があるのか、見ていきましょう!
路線名 | 交直切替区間 |
---|---|
JR羽越本線 | 村上~間島間 |
JR東北本線 | 黒磯駅構内 |
JR水戸線 | 小山~小田林間 |
JR常磐線 | 取手~藤代間 |
つくばエクスプレス | 守谷~みらい平間 |
えちごトキめき鉄道の日本海ひすいライン (旧JR北陸本線) | えちご押上ひすい~梶屋敷間 |
JR北陸本線 | 敦賀~南今庄間 |
JR七尾線 | 津幡~中津幡間 |
JR山陽本線/鹿児島本線 | 下関~門司間 |
以上の区間を交直流電車が走っています!ぜひ一度ご乗車してみてはいかがでしょうか?
まとめ:交直流電車の仕組みを知って、長中距離の電車旅を楽しもう!
今回は交直流電車の仕組みについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
なかなか乗る機会がないかもしれないですが、知らないで乗るのと知ってて乗るのでは電車の楽しみ方が全然違いますよね!
ぜひ今回のことをきっかけにいろんな電車について知っていただけたら幸いです。
その他の電車が動く仕組みについても解説しておりますので、合わせてご覧いただければと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!