こんにちは!
皆さんはどのように電車が出来ているか、考えたことはありますか?
電車って本当に安全なのかな?
そもそも電車ってどんな構造でできているの?
こんな疑問や不安を解消します!
電車を含む鉄道車両では「鉄道営業法」という法律にもとづいて制定された、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」という国土交通省の省令にもとづいて作られています。
なので、厳しい基準があってこれをクリアしないとお客さまを乗せて走ることはできません!
ではどういった項目があって、どんな仕組みになっているのか。一緒に勉強していきましょう!
普段利用する電車の安全の取組みや構造を知ることで
安心してご乗車していただければと思います!
それでは、よろしくお願いします!
鉄道車両の構造が原因で起こった悲惨な事故:桜木町駅火災事故について
はじめに車両上の構造が原因で起こってしまった事故についてお話します。
1951年4月24日、当時の国鉄(日本国有鉄道:JRの前身)時代に京浜東北線の桜木町駅構内で火災事故が発生しました。
原因は架線の工事ミスで切れた架線が電車に接触することでショートしてしまい、大きな電気が流れることにより火災が発生しました。
この火災では106名のお客さまが焼死、92名が重軽症という大変な災害でした
なぜこのような大事故になってしまったかというと
- 窓の中段が開かない構造であったため、車外に脱出できなかった
- 車両間の貫通扉が内開きの構造になっており、お客さまの圧力で開けられなかった
- 非常用のドアの開扉装置の位置が分からなかった
- 木製で不燃性でない構造の車両であった
ことが、被害が拡大してしまった車両上の原因とされています。この事故を教訓として、現在の車両では火災や構造を厳重に管理しています。
省令を守った鉄道車両の安全性を確保するための構造!
電車にはお客さまや荷物を安全に輸送するという絶対の使命があります。
先ほどの桜木町駅での事故を繰り返さないために、十分な強度を確保し、列車火災などの事故が起きた際にも対応できるように火災にも十分に配慮されています。
以下、省令の抜粋になります
(車体の構造)
第七十条 車両の車体は、堅ろうで十分な強度を有し、運転に耐えるものでなければならない。(車両の火災対策)
鉄道に関する技術上の基準を定める省令より
第八十三条 3 旅客車の車体は、予想される火災の発生及び延焼を防ぐことができる構造及び材質でなければならない。
つまり、車両は頑丈であって、火災があった場合にも被害が広がらないような構造にしてくださいということですね。
特に2000m以上の長いトンネルや地下鉄などを走行する車両は不燃構造の基準がより厳しくなっています。
また、高速車両ではトンネルの出入りの際に起こる気圧変化に対応できるように、車内の気圧を一定に保つ構造になっています。
このような条件を満たすために様々な対策が取られています。
- 非常用の連絡装置の設置
- 非常用のドアの開扉装置の設置
- 車内に消火器を設置
- 座席・つり革・床などで難燃性の素材を採用
- 貫通扉(車両間の通り道)の設置
などの取組みがされています。
また昔は木製だった車両も、今では金属製になることで火災対策や強度の向上につながっています。
車体は6面体の箱だった!鉄道車両の車体構造について
初期の鉄道車両では、トロッコに箱を乗せただけの車体構造でした
その後、金属製の台枠(底面)に木製の小屋を乗せた木製車になり、金属車へと変わっていきました。なので台枠とお客さまや荷物が乗る部分では構造が異なっていました。
現在の車体は住宅のような梁がある構造になっていて、一つの箱のような形になっています。
このような構造を張殻構造(はりがらこうぞう)といい、上下・前後・左右からの力を受けたときに車体全体で変形を防ぐ構造になっています。
この構造の車体は以下のような構体でできています。
- 車体の床面:台枠
- 車体の側面:側構体
- 車体の天井:屋根構体
- 車両間の側面:妻構体
順番に見ていきましょう!
鉄道車両の構造①車体の床面:台枠
台枠は車体の構造で大きな力を支えるとても重要な部分で、厚い板を用いるので車体の重量の大部分を占めています。
支えている荷重には
- お客さまや車内設備
- 車体下にぶら下げている各車両機器
- 両端部の車両同士をつなげる連結装置
まさに縁の下の力持ち的な存在ですね!
鉄道車両の構造②車体の側面:側構体
側構体は車両の長手方向に広がって梁があり、家でイメージする梁に一番近いかもしれないですね!
- 車両のドアが開いたときに収納される戸袋
- 窓
- 屋根構体
を支える構体となっていて、垂直荷重(縦方向)のほとんどを支えています。
③鉄道車両の構造③車体の天井:屋根構体
屋根構体は家の屋根のような存在で、梁が通って屋根上の荷重を支えていて、屋根上の機器(空調やパンタグラフなど)を支えています。
空調を屋根上に取り付ける場合は、室内機と室外機を一体化しているため、構体は穴が開いた形になります。そのため、強度には十分な配慮が必要になります。
空調に関してはこちらの記事で詳しく書いているのでぜひ合わせてご覧になってください!
④鉄道車両の構造④車両間の側面:妻構体(つまこうたい)
車両間の側面を妻側(つまがわ)と言います。これはもともと建造物の屋根の棟に対して直角方向の面を妻側と呼ぶことから来ているそうです。
こちらは車両の端部を支えていて、車両間を行き来する貫通扉を構成する構体であります。
側構体と同様に垂直方向の荷重を支えています。
これらの構体で
- お客さまの乗り降りなどによる上下方向の荷重
- 加速・減速による前後方向の荷重
- カーブによる左右方向の荷重
を支える構造となっています。
これらの構体はすべて溶接によって組み立てられています!
組み立ての工程数は1両あたりで2~3万カ所と言われていて、部材加工から車両の完成までは平均で7カ月ほどかかるとされています。
例えば2015年に新車を投入した山手線を1編成作るのに、11両×7カ月=のべ77カ月(約6年半)かかる計算になります。
電車を1編成(1本)作るのって大変!
では次に構体はどんな材料でできているのかについて、お話します!
軽量化や高強度化を実現!鉄道車両を構造する材料について
車体の材料は強度、重量、製造性、耐腐食性、コストなどを考慮して決めています。どんな材料が候補になるかというと
- 鋼
- アルミニウム合金
- ステンレス
があげられます。順番に見ていきましょう!
鉄道車両の構造①圧倒的重量感!鋼製車両の特徴
日本で金属の車両が出来たとき、はじめは鋼製の車両であったそうです。
まずは鋼の特徴を見ていきましょう!
〇材料強度は普通
◎加工性に優れる
◎材料価格が安い
◎耐熱性が高い
◎溶接性が高い
×錆びやすいので、防錆塗装が必要
×重量が重い
といった特徴があります。特に重量のデメリットが高速化やメンテナンス性向上のための課題となっていたため、徐々に姿が少なくなっていくことになります。
まだ残っている鋼製車体について、小田急電鉄の車両をこちらの記事でご紹介されています!
鉄道車両の構造②軽さは1番!アルミニウム合金車両の特徴
高速化のために必要なことは何といっても車両の軽量化です。これを実現するために比重(体積あたりの重さ)が鉄の1/3であるアルミニウム合金が注目されました。
その特徴は以下のようになっています。
◎材料がとても軽い
◎錆びにくい
◎加工性が良い
◎車体の気密性に優れる
×材料強度がやや低い
×材料価格が高い
×耐熱性が低い
×溶接に高度な技術が必要
となっています。重量が軽く、気密性に優れるため、主に新幹線や特急車両で採用されている材料です。
またアルミニウム合金ではダンボールのような「ダブルスキン構造」といった加工が可能で、これにより外板と梁が必要だった構造が省略できるようになったので、強度を確保しつつ軽量化や低コスト化を実現できています。
ダブルスキン構造は日本軽金属さんのページで詳しく書かれています。
アルミニウム合金はリサイクル性に優れるといった特徴もあり、廃車になったものをリサイクルできるといった観点においても非常にエコな材料であると言えます。
鉄道車両の構造③近年の1番の主流!ステンレス車両の特徴
車両の軽量化と錆びにくさの観点から、現在最も多く普及しているのがステンレス車両になります。ステンレスというのはstain-less(錆びない)という意味の材料です。
その特徴は
○軽量化できる
◎錆びない
◎材料強度が高い
◎耐熱性が高い
◎溶接性が高い
×加工性が悪い
×材料価格が高い
×気密性が保ちにくい
最大の特徴は名前の通り錆びないことであるので、鋼製車両のように全体に塗装する必要がないため、銀色のボディに車両カラーのシールを貼るといった外観になっています
鉄道車両の構造に使われる各材料の特徴まとめ
車両メーカーである総合車両製作所によると、2018年4月現在では
- 鋼製車両:16%
- アルミニウム合金車両:24%
- ステンレス車両:60%
といった比率になっているそうです(出典:鉄道チャンネル)
今後ますますステンレス車両が増加してくることが予想されますね!
以下に特徴の一覧をまとめておきます。
鋼製車両 | アルミニウム合金車両 | ステンレス車両 | |
---|---|---|---|
材料強度 | 〇 | 〇 | ◎ |
重量 | × | ◎ | 〇 |
材料価格 | ◎ | × | × |
加工性 | ◎ | ◎ | × |
錆びやすさ | ×(防錆塗装が必要) | ◎ | ◎ |
耐熱性 | ◎ | × | ◎ |
溶接性 | ◎ | × | ◎ |
まとめ:鉄道車両の安全の取組みや構造を知って、安心して電車に乗ろう!
今回は鉄道車両の安全の取組みと構造についてお話しました。
鉄道の歴史は事故の歴史とも言われます。今日までいくつもの事故があり、そのたびに教訓として技術や仕組みが発展してきました。
車内に消火器が設置してあるなど、意外と知らなかったこともあるのではないでしょうか?
普段利用する電車だからこそ、もしもの備えを知って安心してご乗車いただければと思います!
もちろん緊急時には乗務員からのアナウンスがありますが、近年は人手不足からワンマン化や自動運転などが推進されていく流れとなっています。
お客さま自身で自分の身を守るといったことが必要になってくるかもしれませんね
その他の電車の動く仕組みもぜひ合わせて理解を深めていただければと思います!
それでは、ありがとうございました!