こんにちは!今回は鉄道のデジタルATCについてお話しします!
デジタルATCってなに?
普通のATCとなにが違うの?
こんな疑問にお答えします!普通のATC(従来型)については別の記事で解説しました。普通のATCでは
- 常用最大ブレーキとブレーキ緩解を繰り返すため、乗り心地が悪い
- 列車間隔を区間ごとでコントロールしているので、地上装置が主体のシステム
であることがデメリットでした。これらのデメリットを改善するために登場したのが「デジタルATC」になります!デジタルATCは「D-ATC」とも呼ばれ、なめらかな停止制御と車上装置での計算による運転間隔の短縮を実現させるための保安装置です!
この記事ではデジタルATCの仕組みや特徴について、電車整備士歴10年の筆者が解説します!
- デジタルATC開発の歴史
- デジタルATCの仕組み
- デジタルATCがもたらした効果
日々進化する鉄道の仕組みに詳しくなろう!
それでは、よろしくお願いします!
デジタルATC開発の歴史
デジタルATCは従来のATCのデメリットを改善するために、JR東日本と日立製作所が8年かけて共同で開発したものです。(日立製作所HPより)
デジタルATCが初めて導入されたのは、2002(平成14)年に開業した東北新幹線の盛岡~八戸間で使用開始されました。新幹線用のデジタルATCは正確には「DS-ATC(Digital communication & control for Shinkansen-ATC」と言います。おおまかな仕組みは変わらないので、この記事ではデジタルATCで統一します。
その後もいろいろな線区に導入されていき
- 京浜東北・根岸線(2003年~)
- 山手線(2006年~)
- 東北新幹線(2009年~)
- 上越新幹線(2009年~)
- 北陸新幹線(2013年~)
と広く普及していきました。また私鉄の東急東横線でもラッシュ時の遅延間隔の回復に効果があるとして、今後導入される予定となっています。(東急HPの安全対策への取り組みより)
今後も活躍が期待されるデジタルATC、その仕組みについて見ていきましょう!
デジタルATCの仕組み
デジタルATCは自列車の位置情報と速度情報を常に把握しながら走行していることが特徴になります。ここからは
- 従来ATCとの違い
- デジタルATCの仕組み
に分けて解説していきます。
従来ATCとデジタルATCの違い
従来ATCでは地上装置と車上装置が共同作業を行うことで、先行列車との間隔を保ちながら、制限速度を守っていました。この場合はあくまでも地上装置からの信号情報をもとに列車を制御している状態でした。
地上装置に依存している状態!
デジタルATCでは地上装置主体の制御から、車上装置主体の制御へと変わっていきました。ここからは
- 地上装置主体によるデメリット
- 車上装置主体の制御とは
についてお話しします。
地上装置主体によるデメリット
地上装置に依存する場合のデメリットとしては
- 車両ごとにブレーキ性能の違いがあるが、もっともブレーキ性能の悪い車両に合わせる必要があるため、時間的なロスが生まれてしまう
- 先行区間に侵入した際に、突然常用ブレーキがかかってしまうことがあるため、運転士からすると運転性が悪い
これらのデメリットがありました。
これらを解決するために、車上装置主体の制御が開発されることとなりました。
デジタルATCの仕組み:車上装置主体の制御とは
デジタルATCでは地上装置の依存度を減らして、車上装置主体の制御を行っています。これは停止すべき地点の情報を地上から受け取ったら、停止するまでの速度パターンを車両で作成するというものです。順番に見てきましょう!
- 地上装置から、先行列車と自列車の走行位置情報と停止すべき区間情報をもらいます。
- 車上装置では、車両の速度発電機から自列車の速度情報をもらいます。
- 車上装置では、あらかじめインプットされている線路情報をもとに、自列車がどれくらい移動しているのか計算します。
- 列車は走行しながら、一定区間ごとに地上に設置された位置情報をもらい、自列車の位置を微修正しながら走行します。
- 車上装置では、自列車の速度と位置情報をもとに、停止位置までの停車速度パターンを作成します。
- 車上装置では、自列車の速度と作成した停車速度パターンを比較して、細かく最適なブレーキ力を出力します。
- 速度パターンに当たってブレーキが動作する前に、「パターン接近」の注意喚起をすることで、運転士は手動でブレーキ操作することが出来ます
以上のように、デジタルATCではほとんどが車上装置によって制御されています!この車上装置にはあらかじめ
- 線路情報(勾配やカーブなど)
- 車種ごとの車両のブレーキ性能の情報
などがデータベースとしてインプットされています。このデータベースを元に速度パターンを作成しています。
続いては速度バターン作成による「一段ブレーキ制御」についてお話しします!
デジタルATCの仕組み:一段ブレーキ制御とは
デジタルATCの特徴のひとつに「一段ブレーキ制御」というものがあります。これは車上装置で作成された速度パターンをもとに、細かいブレーキの出力と緩解を繰り返すものになります。
デジタルATCではデジタル化することにより、多くの情報を送ることが出来るようになりました。そのため、より細やかなブレーキ制御が可能となりました。具体的には
従来ATCでは常用最大ブレーキとブレーキ緩解を繰り返していました。これを「多段ブレーキ制御」と言います。
それに対しデジタルATCでは
- 速度パターンに接近したら「パターン接近」の信号で運転士に注意喚起
- パターンに当たった際は常用最大ブレーキをかける前に弱いブレーキを出力
- パターンから抜けた際はいきなりブレーキを緩解せずに、弱いブレーキを出力してからブレーキを緩解
以上の細やかな制御を行うことでなめらかブレーキ制御が可能となりました。これが「一段ブレーキ制御」になります。
以上がデジタルATCの仕組みで、最後にデジタルATCがもたらした効果についてお話しします。
デジタルATCがもたらした効果
デジタルATCが開発されたことにより
- なめらかなブレーキ制御による、乗り心地の向上
- 列車の運転間隔や駅到達時間の大幅な短縮
- 列車の運転間隔の短縮により、列車密度を高めることが可能
となりました。山手線の歴史ではデジタルATCの登場により、超過密ダイヤができるようになりました!
以上のようなメリットがあることから、東急東横線でも今後の導入が予定されています。
まとめ:鉄道の安全性と快適性を大幅に向上させた、デジタルATCの仕組みについて理解しよう!
今回は革命的な技術である、デジタルATCについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
デジタルATCは普段利用する鉄道の安全を守るだけでなく、乗り心地の向上や列車本数が増えることによる快適性の向上に寄与した技術です。
2022年3月現在はコロナ禍によってお客さまが離れてしまったころから、列車本数は減少する流れとなっています。今後は自動運転の技術も発達していくことでしょう。
デジタルATCは自動運転の技術の基礎となる部分とも言えるかもしれませんね!
一度に理解するのは難しいと思いますので、アナログATCの仕組みとともに何度も読み返して理解してみましょう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
※今回の記事を作成するにあたり、参考にした資料
JR東日本HPの研究開発(R&D)より、「デジタルATCの開発と導入」
を参考にさせていただきました。