こんにちは!今回は電車のSIVについてお話しします!

電車のSIVってなに?

どうやって電気を作っているの?
こんな疑問にお答えします!
SIVは架線からの直流電源(交流区間ならば一度直流に直して)から、三相交流440V、あるいは200Vを取り出すための装置です。取り出した三相交流は電車の空調やコンプレッサーの動作、室内灯の点灯などに使用されます。
また、SIVが登場する前はMGという装置で三相交流を作り出していました。近年ではメンテナンス性や省エネルギー性を考慮したSIVが主流となっているのですが、そんなSIVの仕組みについて、電車整備士歴10年の筆者が解説します!
- 電車のSIVとは?
- 電車のSIVの仕組みについて
- なぜSIVはMGに取って代わったのか?

普段利用する電車の電気がどうやって作られているのか、理解しよう!
それでは、よろしくお願いします!
電車のSIVとは?
SIVとはStatic Inverterの略で、日本語では「静止型インバータ」と呼ばれます。「静止型」とは、回転や往復運動がないことを意味していて、半導体が電気を高速に入り切りすることで三相交流を作り出しています。これは従来三相交流を作り出していたMGがモーター(電動機)とジェネレーター(発電機)が一体型となっていて、回転して発電する仕組みだったものと比較して「静止型」ということになります。
また「インバータ」とは、直流の電気を交流の電気に変換する装置のことを言います。
なので、架線からの直流電源(交流区間ならば一度直流に直して)から、三相交流440V、あるいは200Vを取り出すための装置がSIV「静止型インバータ」ということになります。
では続いてSIVはどのような仕組みで三相交流を作り出しているのか、見ていきましょう!
電車のSIVの仕組みについて
SIVは架線からの直流電源を三相交流に変換して出力しています。その中でいくつかの工程があり
- 充電回路
- インバータ回路
- フィルタ回路
- 変圧器
の過程を経て三相交流として出力されます。一つずつ解説していきますが、まずはこのイメージをおさえておきましょう!

SIVの仕組み①充電回路
架線からの直流電源は、はじめにSIVの「フィルタコンデンサ」という電気をためる装置に入っていきます。
電車が走行中にパンタグラフが一時的に離れてしまう(離線)ことがあると、三相交流の供給が途絶えてしまいます。そうすると例えば
- 室内灯が一時的に消えてしまう
- 空調が一時的に止まってしまう
などが起こってしまいます。お客さまとしても不快ですし、エコではありませんよね。そのために一度コンデンサに電気をたくわえることで、一時的にパンタグラフが離れてしまうことがあっても安定して三相交流を供給することができます。
では次に三相インバータ回路についてお話しします!
SIVの仕組み②三相インバータ回路
続いて三相インバータ回路で、実際に直流電源を三相交流に変換していきます。ここで「IGBT」というパワー半導体が登場します。

IGBT?パワー半導体??
わけわからん!
パワー半導体とは電源電力の制御や供給を行う半導体のことです。その中でもIGBTは省電力で高速なスイッチングが可能な半導体で、1980年代に登場してハイブリット自動車やエアコンや洗濯機などにも活用されました。
IGBTを用いることで高速なスイッチングを行い、直流電源を三相交流に変換することを可能としています。

簡単に言うと、すごい進化した半導体!

詳しい説明はかなり電気のことを理解していないと難しいので割愛します。ここではIGBTというすごい半導体の登場によって、MGの時よりも簡単に三相交流に変換できるようになったということを覚えておいてください!
しかし、IGBTによって作られた三相交流には「高調波」というノイズが含まれています。それを次のフィルタ回路にて除去します!
SIVの仕組み③フィルタ回路
高速なスイッチングによって作られた三相交流は「高調波」というノイズを発生させてしまいます。高調波は架線電源や電気機器・回路、通信機器に悪い影響を与えてしまいます。
そのためフィルタ回路にて高調波を取り除いてあげます。「リアクトル」と「コンデンサ」という機器を用いることで高調波を除去することが出来ます。これを「LCフィルタ回路」と言います。
ここも難しいので、インバータで作られた三相交流はノイズを発生させてしまうので除去する必要があるということを覚えておきましょう!
最後に出力変圧器で必要な電圧に調整します!
SIVの仕組み④出力変圧器
最後に出力変圧器で440Vあるいは200Vに電圧の調整を行います。
この時、先ほど作られた三相交流とは絶縁された(電気がつながっていない)状態で変圧されます。これは入力側(インバータ側)の電気を電磁誘導によって、出力側(各機器で使用する側)に伝えているためになります。

こうして三相交流は高圧側(架線側)と低圧側(出力側)で切り離された状態で、各機器や各車に供給されていきます。

お疲れさまでした!
ちょっと難しかったと思いますが、これで三相交流が完成しました!
SIVの仕組みがお話しできたところで、最後になぜ現代ではMGよりもSIVが主流なのかについてお話しします!
なぜSIVはMGに取って代わったのか?
なぜ、MGがSIVに代わっていったのか?MGには以下のようなデメリットがありました。
- 回転機構のため、騒音が大きい
- 直流モーターの機構上、整流子面やブラシのメンテナンスが必要
このデメリットを解消するために、半導体を使用するSIVが開発されました。SIVは半導体を用いて電気を変換することから、回転しない(=動かない)ので静止型インバータと呼ばれるようになったそうです。
以上のような経緯からMGは徐々に姿を消していきました。しかし今でもMGを使用している車両は各地に存在しています!

整備士としてはパンタグラフが上がってMGが回りだす時の音はワクワクするものがありますね!
電車のMGの仕組みについて知りたい方は、こちらもぜひご覧いただければと思います。
まとめ:電車のSIVの仕組みを理解して、MGとの違いを楽しもう!
今回は電車のSIVの仕組みについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
SIVの仕組みを理解するには電気的な知識が必要なので難しく感じると思います。ここでは全体の流れと役割をきっちりとおさえておきましょう!
- なぜ充電する必要があるのか?
- 半導体の登場でどう変わったのか?
- インバータで作った三相交流は高調波を除去する必要がある
この辺が理解できれば立派なSIVマスターです!電車を動かすためのVVVFも同じような仕組みなので、覚えておくと理解しやすくなりますね!
その他、電車が動く仕組みもぜひ合わせてご覧いただければと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!