こんにちは!今回は鉄道の究極系とも言える、自動運転についてです。
鉄道の自動運転ってどういう仕組み?
運転士さんっていなくなっちゃうの…?
こんな疑問にお答えします!
今後労働人口が減っていく日本において、運転士や保守要員の確保が難しいことから鉄道の自動運転は需要が高まってくることと思います。実際に地下鉄では多くの路線において導入されており、2021年3月にはJR常磐線(各駅停車)においても導入されました。
JR東日本では2025年以降に山手線・京浜東北線などの主要路線においても導入を予定しています。(引用:JR東日本プレス資料より)
また国土交通省においても「鉄道における自動運転技術検討会」というものが立ち上がっています。(参考:国土交通省HP)
今後ますます注目される自動運転を実現させるのが、ATO(Automatic Train Operation)「列車自動運転装置」です!そんなATOについて、電車整備士歴10年の筆者が解説します!
- ATOが導入された経緯
- ATOの仕組み
- ATOとATCの違い
- 今後の運転士はどうなるのか
これからどんどん進化していく技術の基本をしっかりとおさえていきましょう!
それでは、よろしくお願いします!
ATOが導入された経緯
ATO「列車自動運転装置」が開発されている理由としては、以下のような背景があります。
- 日本では今後、人口が減少していき、鉄道においても運転士などの係員の確保・養成が難しくなる。
- 特に地方路線において深刻な問題になっている。
- そのため、業務の効率化・省力化が求められている。
これらの要因がATO開発の背景となっています。(引用:国土交通省 鉄道における自動運転技術検討会 第一回資料より)
国土交通省による、「鉄道における自動運転技術検討会」は第一回が2018年12月に行われています。しかし実際にATOが初めて実用運転されたのは、1970(昭和45)年の日本万国博覧会において、会場内輸送ですがモノレールで運転されたのが世界発となっています。
その後も1976(昭和51)年に札幌市営地下鉄東西線や1977(昭和52)年に神戸市営地下鉄西神線において導入されていったそうです。しかし完全に無人で運転されているのではなく、ワンマン運転の支援機能として用いられることが多かったようです。またホームドアが設置された駅に正確に停車させるための装置として導入されていきました。
そんな経緯で導入されていったATOですが、今後はさらに導入が加速していきます。まずはATOの仕組みについて、知っておきましょう!
ATOの仕組み
ATOはお客さまを乗せてドアが閉まったら、自動で加速していき、自動で次の駅に停車するための装置です。ではどんな仕組みなのでしょうか?ポイントは
- 地上子
- 車上子
- 車上装置
この3つによって構成されています。鉄道の保安装置ではこの構成は基本ですね!まずは動作概要をイメージしましょう!
ATOでは、ATC(列車自動制御装置)による速度制限の範囲内で、自分の位置情報と速度情報を確認しながら走行していきます。少し難しいと思うので、順番に解説します!
ATOの動作の仕組み
鉄道ではお客さまの安全を確保するために、ホームドア・車両のドアがすべて閉まらないと加速できないようになっています。これを「戸閉連動」と言います。電車のドアの仕組みについても別記事で解説しております。
それではATOの動作の順番になります。
- ホームドア・車両のドアがすべて閉まることで加速の条件が成立し、次の駅に向けて加速していきます。ドライバレス運転でないものは出発スイッチを押す。
- 加速していくと、受電器や車上子がATC信号の速度制限の情報をもらいます。ここで制限速度を超えないように車上装置が計算・調整しながら走行していきます。
- その後は駅に近づくにつれて、地上子を通過するたびに停車までの距離と速度を調整しながらブレーキをかけていくことで、自動で停車します。(この仕組みはTASCと同様)
以上がATOの動作の仕組みとなっています。実は自動で加速していく以外は、他の保安装置との組み合わせによって制御が可能となっているんですね!
その他鉄道の保安装置の仕組みが分からない方は別の記事で解説しておりますので、合わせてご覧いただければと思います。
続いては結局ATOとATCってなにが違うの?ということについてお話ししていきます!
ATOとATCの違い
- ATO(Automatic Train Operation):列車自動運転装置
- ATC(Automatic Train Contorol) :列車自動制御装置
名称としては、運転か制御の違いがあります。これは具体的に言うと
- 運転:出発駅からの加速から停車駅の停止まで
- 制御:速度制限と停止まで
といった違いになります。ATCはあくまで保安装置であり、信号の冒進・速度超過の防止を主な目的としています。これに対してATCは自動運転の機能として、加速から停止までの制御をすべて行うことを目的としています。
ATOの実現のためにATCの制御が必要であるので、その辺が分かりにくい部分かなと思います。
それでは最後に、ATOが進んでいくと運転士はいなくなるのか?についてお話ししていきます。
今後の運転士はどうなるのか?
ATOを使用した路線では
- 運転士のいないドライバレス運転
- 運転士がいるワンマン運転
など様々なパターンがあります。以下にまとめます。
運転方式 | 運転士 | 車掌 | 添乗員 | 巡回員 |
---|---|---|---|---|
完全ドライバレス運転 | – | – | – | – |
巡回員付きドライバレス運転 | – | – | – | 〇 |
添乗員付きドライバレス運転 | – | – | 〇 | – |
ワンマン運転 | 〇 | – | – | – |
ツーマン運転 | 〇 | – | – | – |
2022年現在、完全ドライバレス運転を行っているのは
- 東京のゆりかもめ
- 日暮里・舎人ライナー
- 大阪のニュートラム
- 神戸のポートライナー・六甲ライナー
などで行われています。JR東日本では2025年以降から首都圏の山手線などの路線においてワンマン運転化、将来的にはドライバレス運転を実現させたいと展望を示しています。
しかし、完全ドライバレス運転を実現するにはいくつかの課題があります。それは
- ホームドアの整備
- 踏切の撤去
- 高架化
- 異常時の対応
などが課題となっています。国土交通省では、ATOの技術レベルに段階を設けています。
JR東日本では、将来的にGoA3のレベルを目指すとしています。
私見としては、技術・設備上の課題が山積みである点から少なくとも10年以上は実現しないと思っております。
ですが技術は日々進化していきますので、将来の夢は運転士!と言う方は今の時代のうちに運転士を目指すことをオススメします!
まとめ:完全ドライバレス運転はまだまだ先!ATOの仕組みを知って、早めに運転士を目指そう!
今回はATO「列車自動運転装置」についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
自動運転は国土交通省をはじめ、各鉄道事業者において今後確実に進めていく技術です。皆さんが安心して鉄道を利用するためにも、ATOの仕組みについてご理解いただけたらと思います。
また運転士がいなくなる完全ドライバレス運転にはまだまだ時間がかかると思っています。しかしワンマン運転等も進んでいくので、運転士を目指している方は早めに希望を出したり、転職活動をしましょう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!