こんにちは!今回は山形新幹線や秋田新幹線で活躍する「ミニ新幹線」についてのお話しします。
ミニ新幹線ってどんな仕組み?
普通の新幹線や在来線とは何が違うの?
こんな疑問に答えていきます!
そもそもミニ新幹線とは、在来線区間に新幹線が乗り入れているものを言います。具体的には
がミニ新幹線になります。ではそんなミニ新幹線の仕組みについて、ご紹介します!
- ミニ新幹線とは?
- ミニ新幹線と普通の新幹線、在来線の違い
- ミニ新幹線の仕組み
- ミニ新幹線が失敗だったと言われる理由
今後新設される西九州新幹線ではミニ新幹線にするかどうかの議論もされているので、仕組みを理解して話題をしっかりとおさえておきましょう!
それでは、よろしくお願いします!
ミニ新幹線とは?
ミニ新幹線とは、在来線区間を走る新幹線のことを言います。ではそもそも「在来線」と「新幹線」とはなんでしょうか?それぞれの定義を見ていきましょう!
在来線とは?
在来線とはJR(旧国鉄)の路線のうち、新幹線でない路線を表す言葉になります。
1964(昭和39)年に世界初の高速鉄道である「東海道新幹線」が開業しましたが、それ以前は「在来線」という言葉はありませんでした。そこで新幹線とそれ以外を分ける言葉として「在来線」という言葉が誕生しました。
在来線の多くは線路の幅(軌間)が1,067mmで建設されたものを走っています。この幅の線路を狭軌(きょうき)と言います。
また電源となる架線電圧は交流20,000Vを使用しています。
新幹線とは?
新幹線とは200km/h以上で走行する列車のことを言います。
具体的には「全国新幹線鉄道整備法」という法律によって以下のように定義されています。
その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。
全国新幹線鉄道整備法 第一章 総則 第二条より抜粋
新幹線では高速での走行を可能とするため、線路の幅(軌間)は1,435mmで建設されたものを使用しています。この幅の線路を標準軌(ひょうじゅんき)と言います。
また電源となる架線電圧は交流25,000Vを使用しています。
在来線と新幹線の定義がわかったところで、ミニ新幹線はどちらに含まれるのか見ていきましょう!
ミニ新幹線は新幹線じゃなかった!
結論を言うと、ミニ新幹線は新幹線ではなく「在来線特急」の扱いとなります。
山形新幹線も秋田新幹線も、東北新幹線の区間以外(奥羽本線、田沢湖線内)ではスピードは設備上の制限で最高で130km/hとなっています。新幹線の定義は「200km/h以上で走行する区間」となっているので、定義的には在来線扱いということになります。
さらに「急行列車よりも停車駅が少なく、高速で走る車両」を特急列車と呼ぶので、山形新幹線・秋田新幹線は在来線特急ということになります。
また在来線区間を走行するため、車両のサイズが在来線に合わせたものとなっています。
山形新幹線(E3系) | 秋田新幹線(E6系) | その他の新幹線(E5系) | |
---|---|---|---|
車体長さ(中間車) | 20,000mm(20m) | 20,500mm(20.5m) | 25,000mm(25m) |
車体幅 | 2,950mm(2.95m) | 2,945mm(2.945m) | 3,350mm(3.35m) |
座席(最大) | 4列×17席 | 4列×17席 | 5列×20席 |
座席の数もかなり少ないですよね。
そのため、正式な新幹線ではなく「ミニ新幹線」の愛称で親しまれています。
一方で東北新幹線として走る区間では、それぞれの車両性能での最高速度
- 山形新幹線:275km/h
- 秋田新幹線:320km/h
で走行するので立派な新幹線でもあり、特徴的な二面性を持っています。
それではミニ新幹線の定義がわかったところで、続いてミニ新幹線の仕組みについて見ていきましょう!
ミニ新幹線の仕組み
ミニ新幹線は在来線の区間を新幹線車両が走行できるように改良工事した区間になります。具体的な仕組みのポイントとしては
- 在来線区間の軌間(1,067mm)を新幹線車両が通れる軌間(1,435mm)にする
- 在来線と新幹線で異なる架線電圧に対応できるようにする
ことがポイントになります。それぞれについて詳しく見ていきましょう!
在来線区間の線路を改良工事
新幹線車両を走行できるようにするためには軌間を標準軌(1,435mm)に拡張しなければなりません。そこで
- 山形新幹線ではすべての線路を標準軌(1,435mm)に改良
- 秋田新幹線では奥羽本線内の一部を除き、すべての線路を標準軌(1,435mm)に改良
する工事を行いました。
え、じゃあ秋田新幹線の一部はどうなってるの?
これは、三線軌(さんせんき)と言って3本のレールを使うことで標準軌と狭軌の両方の車両が走行できる仕組みを採用しています。(三線軌条とも言います)
2種類の架線電圧に対応する「複電圧車両」
在来線用の交流20,000Vと新幹線用の交流25,000Vを同じように取り込んでしまうと車両の機器は壊れてしまうため、車両側ではそれぞれの電圧に対応した変圧器や制御器に切り替える必要があります。このように複数の電圧に対応している車両を「複電圧車両」と言います。
また架線電圧が切り替わる境界には「デッドセクション」というものが設置されています。
デッドセクションとは架線に電気が流れていない区間のことで、この区間を走行中に車両側ではそれぞれの電圧に対応できるように回路を切り替えています。架線に電気が流れていないため死んでいる区間、「デッドセクション」と呼ばれています。
具体的には線路に「地上子」と呼ばれる信号発生装置で車両側に回路を切り替える必要があるという指令を発信することで、回路の切り替えを行っています。車両側は架線からの電源を受け取ってしまうと故障してしまう可能性があるので、ノッチオフ(惰行運転)することで、一時的に架線からの電気を受け取らないようにしています。
デッドセクションはそれぞれ
- 山形新幹線:福島駅
- 秋田新幹線:盛岡駅
に設置してあるそうです。
ちなみにミニ新幹線以外でもJR常磐線やつくばエクスプレスなどでは、直流区間と交流区間を走るため「交直デッドセクション」を設置して直流用と交流用に車両側の回路を切り替えています。
※実際にはミニ新幹線では新幹線用の電圧を落としただけでも、在来線としては十分な性能を発揮できるため簡素な設計となっているそうです。5,000V分は許容範囲内なのだとか。
以上がミニ新幹線が新幹線と在来線区間を両方走れる仕組みになります!
それでは最後にミニ新幹線は失敗だったのでは?と言われてしまう理由について考察していきます。
ミニ新幹線が失敗だったと言われる理由
「ミニ新幹線は失敗だった、いらない」などと言われることがたまにあります。これはミニ新幹線の仕組みがもたらす以下のようなデメリットが原因となっています。
- 山形・秋田新幹線内の大雪が原因で東北新幹線の遅れが発生してしまう
- 在来線区間には踏み切りがあるため、人身事故などの事故が発生すると遅れが発生してしまう
- 最高速度が130km/hなので、在来線の最高速度110km/hとそこまで差がつかない
山形県のHPにはこうした山形新幹線の課題解決に向けて、フル規格の新幹線を整備する必要があるのでは?との議論が進められており、JR東日本への要望活動などをしているようです。(参考:山形県ホームページより)
一方でJR東日本では快適性の向上や輸送障害時の早期復旧に向けた対策として
- 新型新幹線E8系の投入(2024年春予定)
- 福島駅のアプローチ線新設工事(2026年度末予定)
が計画されています。E8系はフル規格新幹線の予定ではないようですが、どんな車両ができるのか楽しみですね!(参考:JR東日本プレス資料より)
まとめ:ミニ新幹線の仕組みを知って、電車の旅を楽しもう!
今回はミニ新幹線の仕組みについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
出張や旅行などで乗る新幹線も、違いや仕組みを知っておくことでいつもと違った楽しみ方ができますよ♪
ミニ新幹線である山形新幹線「つばさ」E3系車両、秋田新幹線「こまち」E6系車両についてもそれぞれ記事を書いていますので、ぜひ合わせてご覧いただければと思います。
また電車と新幹線の違いについても記事を書いておりますので、ぜひ合わせてご覧いただければと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!