こんにちは!今回はVVVFインバータについてお話しします。
VVVFインバータってなに?
仕組みが難しくてわからないんだけど
こんな疑問にお答えします!
VVVFインバータとは架線からの電源を使って交流モーターを回して速度制御するための制御装置です。また回生ブレーキとしてブレーキ力を電気として架線に返すこともやっています。
このVVVFインバータが開発されたおかげで現代の電車の技術は大きく進歩しました!
そんなVVVFインバータは仕組みが難しいと言われることが多いですが、今回はわかりやすく解説します!
- VVVFインバータとは?
- 三相交流とは?
- VVVFインバータの仕組み
VVVFインバータの仕組みについて学んでみよう!
それでは、よろしくお願いします!
VVVFインバータとは?
VVVFとは、Variable Volotage Variable Frequencyの略で、日本語では可変電圧可変周波数を意味します。
インバータとは、直流電気を交流電気に変換する装置のことを言います。
VVVFが登場する以前は直流電気を使って直流モーターを回して電車を動かしていました。詳しくは直流モーターが回転する仕組みの記事をご覧ください。
ここからはなぜVVVFインバータが登場することで技術が飛躍的に進歩したのか
- 直流モーターのデメリット・交流モーター(誘導電動機)のメリット
- 三相交流とは?
- 可変電圧可変周波数が必要な理由
についてお話ししていきます!
直流モーターのデメリット・交流モーター(誘導電動機)のメリット
VVVFインバータが登場する以前は架線からの直流電気で直流モーターを回して電車を動かしていました。この頃制御方法である抵抗制御の仕組みについては別の記事で解説しておりますので、ぜひ合わせてご覧いただければと思います。
しかし、この直流電気での制御にはデメリットがありました。それは直流モーターのメンテナンスが大変なことです。直流モーターでは
- ブラシの交換が必要
- 整流子面の手入れが必要
といったデメリットがありました。交流モーター(誘導電動機)ではブラシや整流子面がないので、その分メンテナンスが楽になります。
いっぽうで速度を制御するのが難しいといった問題がありましたが、VVVFインバータが登場することにより交流モーターでの速度制御が簡単になり、普及することとなりました。
三相交流とは?
交流モーター(誘導電動機)を制御するには三相交流という電気が必要になります。
通常の交流電気は、電源からの電気がプラスとマイナスを行ったり来たりするものでした。この一つの波を一相といいます。3つの相を少しずつタイミングをずらして発生させたものを三相交流と言います。
一相の波がプラスとマイナスを通ってもとに戻るまでを「1周期」と言います。この1周期は1周を360°として、どこにいるかを「°」で表します。これを「位相」と言います。
また1周期の速さを「周波数」と言います。
※参考:周期と周波数は逆数の関係にあります。例えば1周期に0.02秒かかる波は、周波数は50[Hz]ということになります。
VVVFインバータでこの三相交流を発生させることにより、誘導電動機をなめらかに回転させ、制御することができます。
可変電圧可変周波数が必要な理由
電車ではSIVやMGを使って三相交流を発生させて、空調やコンプレッサーなどの電源として使用しています。それぞれの詳しい仕組みについては別の記事をご覧いただければと思います。
VVVFインバータが作る三相交流と違って、SIVやMGが作る三相交流はCVCF(Constant Voltage Constant Frequency)です。これは一定電圧、一定周波数を意味します。
SIVやMGが作る三相交流は空調やコンプレッサーなどで使用するので、電源が一定であることが望ましいです。
家庭用のコンセントの電源が変化したら困りますよね!
しかし、電車のモーターを速度制御するには細やかな制御が必要になります。
- ノッチ数に応じた制御
- お客さまの乗車数に応じた制御
- 回生ブレーキの制御
など、状況に応じた制御をするために電圧や周波数を変化させています。
以上がVVVFインバータとはの説明になります。ここからはVVVFインバータの仕組みについてお話しします!
VVVFインバータの仕組み
VVVFインバータはどうやって三相交流を作り出しているのか、ポイントは「スイッチング」になります。スイッチングとはスイッチの動きのことです。
以下の図がVVVFの基本的な回路になります。
VVVFインバータでは三相交流を作り出すために、「U相」「V相」「W相」の3つの相に分けて直流電気を交流モーター(誘導電動機)に送ります。各相において2つずつスイッチがあり、その組み合わせによって三相交流を作り出しています。
それではスイッチングの例を見てみましょう!
上の図ではU1、W1、V2のスイッチがONの状態となっています。この状態では架線からの電気はU1、W1を通ってモーターに入り、V2を通ってグランド(-)に行きます。
スイッチは次々と組み合わせを変えていきます。次の図ではどのようにスイッチが組み合わせを変えていくのか見ていきましょう!
このように少しずつそれぞれのスイッチを入れるタイミングをずらしていきます。こうした場合、先ほどの回路の中央にあるU、V、W相での電圧はどうなるか見ていきましょう!
架線電圧をEとすると以上のような電圧の状態になります。さらにU、V、Wの各相の間の電圧(線間電圧)を見てみると
以上のようになります。少し難しいと思うのでまとめると、位相が0°の時を見てみると各相の電圧は
- U相:E
- V相:0
- W相:E
となっています。線間電圧とは、各線の間の電圧を測定したものになります(通常の電圧は各相とグランドの間の電圧)。
U-V相間の線間電圧というのはU相を基準としてV相の電圧を見たとき、というイメージです。なので
- U-V相間(U相基準):E(E-0)
- V-W相間(V相基準):-E(0-E)
- W-U相間(W相基準):0(E-E)
ということになります。ここで各相の線間電圧の動きを見ていくと
ひとつの波のように見ることができます。これが三相交流を作り出す仕組みになります!
図ではかなり強引な感じで表現をしていますが、実際にはかなり高速にスイッチングを行うことでこの波形を作り出しています。以上が簡単なVVVFインバータの仕組みになります。
参考:VVVFインバータのスイッチングについて
VVVFインバータの説明では単純にスイッチのみを表現しましたが、実際には「サイリスタ」と呼ばれる半導体が肝になります。当ブログでは詳しい半導体の説明は省きますが、簡単に言うと小さい電流(制御電源)で大きな電流(主回路電源)を入り切りするものと覚えておいてください!
サイリスタの中でもVVVFでは
- GTO
- IGBT
といったサイリスタを用いてスイッチングを行っています!
GTOとIGBTを使った従来のVVVFインバータ
GTOは(Gate Turn-Off thyristor)、IGBTは(Insulated Gate Bipolar Transistor)の略になります。
VVVFインバータ登場の初期ではGTOを用いたインバータが採用されてきましたが、現在では
- スイッチング速度が速い
- 騒音が小さい
などのメリットがある、IGBTを用いたインバータが主流となっています。
最新型のSiCを使ったVVVFインバータ
GTOもIGBTもSi(シリコン)を素材に使っていました。近年ではSiC(シリコンカーバイド)を採用したVVVFインバータが登場しています。
このSiCはSiに対して約10倍の絶縁破壊強度をもっており、素子の厚さを1/10にすることができます。これにより素子に電気が通る際の抵抗を小さくすることが出来、発熱が少なることで、冷却器を小さくできる(VVVFインバータの小型化)といったメリットがあります。また
- 回生ブレーキの効率向上により、多くのエネルギーを再利用できる
- スイッチングによる無駄な電気(損失)が減ることにより、モーターの回転も効率よくできる
といったメリットがあり、エコな観点からも注目されています。実際にJR山手線E235系などの多くの電車において採用されている、次世代のVVVFインバータです。
参考終わり
まとめ:VVVFインバータの仕組みを知って、電車の音に注目してみよう!
今回はVVVFインバータの仕組みについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
VVVFインバータはGTOやIGBTなど使う半導体によって走行時の音も変わってきます。中でももう引退してしまいましたが、発車時にドレミファソラシドを奏でる、京急のドレミファインバータというVVVFインバータを搭載した電車は特徴的でした!
VVVFインバータの仕組みは詳しく理解しようとすると半導体の話もあって非常に難しくハードルが高く感じると思います。
まずは簡単にざっくりとしたところから理解していただけたら幸いです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!